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インタイ
いんたい⑯
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水着に着替えてプールサイドに降りる。ここで泳ぐのも最後だ。
「4の2の加太です。」
「はい、じゃあ横でマーク見せて。」
召集係の役員の人にADカードとマークを見せて、召集所に入っていく。
ベンチに座って、目の前でやっているレースを見る。ちょうど杏ちゃんが泳いでいた。
「これなら…」
後輩たちがここまで育ってきている。長い距離に出ようとするメンバーも増えてきて、distanceはこれからさらに強くなっていくだろう。
俺はその踏み台になればいい。みんなが育っていくその土台を作れたら、俺はこの6年間を泳ぎ続けてきた、その証が残るからだ。
一つ一つ前に進んでいき、そして俺たちの番になる。
ジャージを脱ぎ、袋に入れ、その荷物を横のベンチに置く。そこには杏ちゃんがいた。
「加太先輩。ラスト、頑張ってください。」
「おう。」
拳を付き合わせ、俺は並ぶ。シリコンキャップをつけて、戦闘準備は万端だ。
自分のレーンに入って、役員の人にお辞儀をする。そして、プールを向いた。
流れる水の音、広がる1面の青。左右のスタンドから聞こえてくる応援の声は、心臓を掻き立てる。
「お願いします。」
そうプールにお辞儀をして、俺はいつものルーティーンを始めた。
このルーティーンをするのもこれで最後かと思うと、少し感慨深い。そして、その時が来る。
―ピッピッピッピッ…ピー
コース台に上がり、そこからプールを眺める。最後だ。これで俺は引退だ。たった5分後には俺はもう水泳選手じゃなくなっている。
両足を揃え、その横に手を置き、さらに左足を引いた。
「Take your marks…」
―ピッ
俺は飛び込んだ。
ドルフィンキックを6回。そして浮き上がってくる。3ストローク目で呼吸をして、そこから波に乗った。
(やっぱり置いていかれたか。)
横のレーンのやつは見たことがあるやつで、前半型のやつだった。だから最初はついていけないとは思っていたが、まさかここまでとは。
他のメンバーにも置いていかれているのは分かっている。が、俺は何故か落ち着いていた。
(今までやってきたことは、ここで無理に上げないこと。ここは耐えて最後に全部ぶつける。)
一つ一つの動作を丁寧に泳いでいく。肘を立ててキャッチを始め、肘から掌までを面にして水をかく。身体のちょうど真下の辺りの水をかいて、そして太もものほうに投げる。そして水から手を抜いて、スムーズに元の位置に戻し、静かに水に入れる。
それだけの単純な作業なのに、俺はまだまだ未熟だ。その事が分かっているから、俺はこんななのだ。
(最後50m。)
1500よりもやはり時間が過ぎるのが短くて、もう終わってしまう。俺は最後に全力を出す。足も動かして、テンポも上げて、そんでもって空回りはしない。どんなタイムでも、どんなに弱くても、誰かの記憶に残るように泳ぎ切る。それだけだ。
黄色い壁が近づいてきて、俺はタッチを合わせる。そして、指先が触れた。
掌までしっかりとつけ、そして顔を上げる。振り向いて電光掲示板を見た。
「クソッ」
ベストプラス1秒だった。
「4の2の加太です。」
「はい、じゃあ横でマーク見せて。」
召集係の役員の人にADカードとマークを見せて、召集所に入っていく。
ベンチに座って、目の前でやっているレースを見る。ちょうど杏ちゃんが泳いでいた。
「これなら…」
後輩たちがここまで育ってきている。長い距離に出ようとするメンバーも増えてきて、distanceはこれからさらに強くなっていくだろう。
俺はその踏み台になればいい。みんなが育っていくその土台を作れたら、俺はこの6年間を泳ぎ続けてきた、その証が残るからだ。
一つ一つ前に進んでいき、そして俺たちの番になる。
ジャージを脱ぎ、袋に入れ、その荷物を横のベンチに置く。そこには杏ちゃんがいた。
「加太先輩。ラスト、頑張ってください。」
「おう。」
拳を付き合わせ、俺は並ぶ。シリコンキャップをつけて、戦闘準備は万端だ。
自分のレーンに入って、役員の人にお辞儀をする。そして、プールを向いた。
流れる水の音、広がる1面の青。左右のスタンドから聞こえてくる応援の声は、心臓を掻き立てる。
「お願いします。」
そうプールにお辞儀をして、俺はいつものルーティーンを始めた。
このルーティーンをするのもこれで最後かと思うと、少し感慨深い。そして、その時が来る。
―ピッピッピッピッ…ピー
コース台に上がり、そこからプールを眺める。最後だ。これで俺は引退だ。たった5分後には俺はもう水泳選手じゃなくなっている。
両足を揃え、その横に手を置き、さらに左足を引いた。
「Take your marks…」
―ピッ
俺は飛び込んだ。
ドルフィンキックを6回。そして浮き上がってくる。3ストローク目で呼吸をして、そこから波に乗った。
(やっぱり置いていかれたか。)
横のレーンのやつは見たことがあるやつで、前半型のやつだった。だから最初はついていけないとは思っていたが、まさかここまでとは。
他のメンバーにも置いていかれているのは分かっている。が、俺は何故か落ち着いていた。
(今までやってきたことは、ここで無理に上げないこと。ここは耐えて最後に全部ぶつける。)
一つ一つの動作を丁寧に泳いでいく。肘を立ててキャッチを始め、肘から掌までを面にして水をかく。身体のちょうど真下の辺りの水をかいて、そして太もものほうに投げる。そして水から手を抜いて、スムーズに元の位置に戻し、静かに水に入れる。
それだけの単純な作業なのに、俺はまだまだ未熟だ。その事が分かっているから、俺はこんななのだ。
(最後50m。)
1500よりもやはり時間が過ぎるのが短くて、もう終わってしまう。俺は最後に全力を出す。足も動かして、テンポも上げて、そんでもって空回りはしない。どんなタイムでも、どんなに弱くても、誰かの記憶に残るように泳ぎ切る。それだけだ。
黄色い壁が近づいてきて、俺はタッチを合わせる。そして、指先が触れた。
掌までしっかりとつけ、そして顔を上げる。振り向いて電光掲示板を見た。
「クソッ」
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