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インタイ

いんたい⑭

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 中央大会最終日。昨日は男子のメドレーリレーが近畿大会出場を決めて、流れはいい。今日引退になるが、だからといっていつもと違うところは何もない。今出せるだけのベストを尽くすだけだ。

「奏、呼吸やる?」
「おう。頼む。」
「海南さん、俺もやるんでちょっと待ってください。」
「あっ、俺もやります!」
「楓さん、ちょっと、ちょっとだけ待って!」

俺が呼吸を始めようとしたら、みんながいそいそとマットを持ってきた。そんな姿を見て、俺と楓は笑う。

「はいはい。そんな急がんでええから。30秒前。」
『えーい。』

マットに寝転んで、肩と肘、そして膝をリラックスする。

「よーい始め。」

楓がそう言って、俺は深く呼吸を始める。10秒吐いて、10秒止めて、10秒吸う。それを3回。肺を大きく広げて、肺を起こしていく。

「終わり。腹圧いきまーす。よーい始め。」

次は腹圧。まずはそのままの体勢で腹圧を入れる。30秒経ったらストリームラインを組んで、もう一度腹圧を入れる。

「終わり。話始まったら呼ぶからみんなはストレッチしといて。あ、今日出る種目ないメンバーはこっち来て。やること教えるから。」

楓も今日で引退だ。だから今日1日で全てを教えて、引き継がないといけない。

「奏さんも海南さんもラストっすか。」
「夢は近畿残ったからな。そこまでは続けるみたい。」
「寂しくなるな。」

隣でストレッチをする藍はそう呟く。

「そんなの、俺もさ。」

俺は今日でこの6年間の水泳人生が終わる。だから、少しくらい寂しく感じる。

 ストレッチをしながら楓が呼びに来るのを待ち、そして、全身の筋肉を解して、ストレッチを終えた。

 一足先にスタンドに戻ると、楓がラップ表にレーンを書き込んでいた。

「俺何レーン?」
「4の2。その後はちょっとしてから志帆の1ブレがある。どうせダウンなんかせずに帰ってくるんやろ。」
「もちろんや。必要ないからな。」

誰もいないメインプールを見て、1度深呼吸をする。

「あんまり気張らんようにな。いつも通りやったら絶対タイム出るねんから。」
「あぁ、いつも通り。」

今日はエキシビションと捉えているが、それでもやっぱりタイムは欲しい。スタンスはずっと変わらない。

「いつも通り、いつもを超える。」

俺は静かに呟いて、自分の席に座る。

「うん、それでいい。」

楓はそう言って、ほかのみんなを呼びに裏に行った。
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