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インタイ
いんたい②
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いつものラクタブドーム。今まで幾度となくここに来てきた。
「奏、顔怖い。」
「マジ?」
「うん。緊張してるやろ。」
楓は俺の些細な変化に気がついてそう声をかけてくれる。俺は胸を押さえて、そして離した。
「まぁ、緊張してないと言えば嘘になるな。うん。してる。と思う。」
言葉にするほど不安になってくる。今日の1500は楽しみではあるけど、少し怖いところもある。人生最後の1500だ。やっぱりベストを出したいし、でも、意識すると本当に出るのか不安になる。
そのとき、楓が俺の背中を叩いてきた。
「自信持ちーさ。今まで6年間何やってきてん。100×30本、100×24本、600×5本からの800、50×64本。そんなのに比べたらたった1500やん。だいじょーぶ。奏は泳げる。」
横を向けば、楓が笑っている。そんな楓を見て、俺は笑ってしまった。
「絶対今ちゃうくてレース前やろ。それ言うんは。」
「はぁ?奏がなんかめちゃくちゃ不安そうやったから元気づけようと思っただけやのに。」
「分かったって。ありがとな。」
拗ねそうになっている楓をなだめながら、他のメンバーが来るのを待つ。
まだ開場前なのに、役員の人が出てきた。
「予定を早めて入場を始めます。ADカードを首から提げて入場してください。」
外は雨だからか、入場が早まった。俺はグルラにそのことを送って、入場する。指定された観客席に座って、勝負の舞台となるプールを上から眺める。
「奏、先呼吸やる?」
「いや、みんな揃うまで待つわ。マットは…1年に頼もか。」
「せやな。」
先に着いたからちょっとだけ暇になって、2人で喋りながら待つ。
「なあなあ、ガウン持ってきた?」
昨日までの話にガウンの話が上がっていなかったのを思い出す。
「あっ、あちゃー…。多分入れてないわ。どうする?いるかな?」
「いるなぁ。明日は特に決勝有り得るし。」
「まだ間に合うか。とりあえず学校残ってる組にRINEしとくわ。色はどれ?」
「白やろ。夢は多分白って言う。」
倫也と和香にそれぞれRINEを送る。すると、和香はすぐに返事が返ってきた。
「和香、りょーかいやって。明日持ってきてくれるみたい。」
「これって先生把握してるんかな?」
「さぁ。まあ、実際ジャージでもええんやから自由なんちゃう?知らんけど。」
入場口に白いポロシャツの集団が見え始めた。うちの学校だ。
「みんな来た。遅すぎやろ。」
「ホンマの時間やったらギリッギリやで。」
手を振ったら俺たちに気づいたようで、こっちに歩いてきた。
「奏、顔怖い。」
「マジ?」
「うん。緊張してるやろ。」
楓は俺の些細な変化に気がついてそう声をかけてくれる。俺は胸を押さえて、そして離した。
「まぁ、緊張してないと言えば嘘になるな。うん。してる。と思う。」
言葉にするほど不安になってくる。今日の1500は楽しみではあるけど、少し怖いところもある。人生最後の1500だ。やっぱりベストを出したいし、でも、意識すると本当に出るのか不安になる。
そのとき、楓が俺の背中を叩いてきた。
「自信持ちーさ。今まで6年間何やってきてん。100×30本、100×24本、600×5本からの800、50×64本。そんなのに比べたらたった1500やん。だいじょーぶ。奏は泳げる。」
横を向けば、楓が笑っている。そんな楓を見て、俺は笑ってしまった。
「絶対今ちゃうくてレース前やろ。それ言うんは。」
「はぁ?奏がなんかめちゃくちゃ不安そうやったから元気づけようと思っただけやのに。」
「分かったって。ありがとな。」
拗ねそうになっている楓をなだめながら、他のメンバーが来るのを待つ。
まだ開場前なのに、役員の人が出てきた。
「予定を早めて入場を始めます。ADカードを首から提げて入場してください。」
外は雨だからか、入場が早まった。俺はグルラにそのことを送って、入場する。指定された観客席に座って、勝負の舞台となるプールを上から眺める。
「奏、先呼吸やる?」
「いや、みんな揃うまで待つわ。マットは…1年に頼もか。」
「せやな。」
先に着いたからちょっとだけ暇になって、2人で喋りながら待つ。
「なあなあ、ガウン持ってきた?」
昨日までの話にガウンの話が上がっていなかったのを思い出す。
「あっ、あちゃー…。多分入れてないわ。どうする?いるかな?」
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「さぁ。まあ、実際ジャージでもええんやから自由なんちゃう?知らんけど。」
入場口に白いポロシャツの集団が見え始めた。うちの学校だ。
「みんな来た。遅すぎやろ。」
「ホンマの時間やったらギリッギリやで。」
手を振ったら俺たちに気づいたようで、こっちに歩いてきた。
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