陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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インタイ

せんご②

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 とりあえず1レース目の400は流した。流すと言っても、そんなに流しすぎたらもちろん先生から怒られるので、体力を使わないように楽に泳ぐ。そうしたら、思ったよりも早いタイムで泳げた。

「いけるいけるいけるいけるいける!」

スタンドに戻って、楓にラップを見せてもらいながらそう言う。前後半7秒落ちだが、上げる気が一切なかったのでしょうがない。本当ならラスト100をもう少し上げるのがいつもだから。

 そう考えたら、実質ベストが出ていたも同然だ。楽に入ってこのタイムで泳げるんだから、1500も同じようなタイムで泳げるに違いない。

 軽くストレッチして、疲れを抜き、そして応援に回る。俺の次の出番までに何レースかあるからだ。

「おかえり!応援よろしく!」

倫也からそんな声をかけられて、その次のレースから応援が始まる。1500のために体力を残しながら、応援を始めた。

 そして1時間後。レース1時間前くらいになって俺と藍が裏のスペースに移動してストレッチを始める。

「調子どうなん?」
「いや、分からん。奏さんみたいに1本泳いだあとちゃうからアップで泳いで、第2アップ行ってきただけやけど、ちゃんとしたタイムないからな。」

隣でストレッチしている藍と喋りながら、一つ一つ丁寧に身体を動かしていく。肩甲骨周り、背骨、足。この3年間でやってきたドライランドは数知れず。その中でもよく体が動いたものは、身体が勝手に覚えていて、適切な呼吸をしながら、身体を動かす。

「奏さんは400泳いだ疲れとかないん?」
「どーなんやろな。とりあえず泳いでみるまでは分からん。できるだけ疲れんように泳いでんけどな。腐っても今年1早いタイムやし。」
「確かに。ずっと調子悪かったもんな。」

 藍は調子が悪い時期にずっと一緒に泳いできた、今の俺の理解者の1人でもある。どうにかして調子を上げたいからって、相談したこともあって、この苦しい期間を一緒に過ごしてきた、いわば戦友だ。

「でも、今日は調子ええんやろ。上から見とっても分かるぐらい流してんのにタイムいいってことはそういうことちゃうん?」
「まぁ、そういうことやろな。」
「てか、先生に流してんのバレてないん?」
「それがなぁ…バレてないねん。」

そんな話をしていたらスタンドの応援が静かになった。おそらくメドレーリレーが終わったのだろう。

「ん?早ない?今から30分アップ休憩あるけど、それでも10分は早なってるで。」
「マジで?ヤバいヤバい!間に合わんて!」
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