陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

文字の大きさ
上 下
586 / 773
インタイ

ちくまえ

しおりを挟む
 歩き始めてまだ1時間と少し。景色はガラリグラリと変わり、今はマグマが煮えたぎる火山の中。
 見上げれば火山口で、空も少しだが見える。だが、さっきまでは青空だったのが、今では藍色の夜空になっていた。

「おいおい、どうなってやがんだ?」
「なぜか、この空間の時間の流れは長いようっすね」
「で、これは幻だから暑くないんだよね。助かる~」
「そういうわけじゃなく、ここは塔の中だ。温度も塔と同じってだけだ」

 俺はこういう暑苦しいものは、見るだけでも汗が出てくるぜ…。そうだ、試しに触ってみるか。

「よっと…」
『ジュワァ!』
「ドワっ⁉︎ なんだこりゃ、生きてんのか⁉︎」

 マグマに俺の指を近づけた途端、その指をマグマが飲み込もうとした。偶然かと思われそうだが、今のマグマの流れから、微かに脅威のような感覚がした。
 てことは、「俺たちにとって有害な物質=脅威」と考えて良さそうだな。

「おいオメェら! 危険なものに触るんじゃねぇぜ! このマグマみてぇに、俺たちを喰らおうとしてくるぜ!」
「スッゲェ! 体張って実験するなんて、流石父ちゃんだぜ!」
「ニャハハ! やっぱ俺ってスゲェだろ!」
「ただ単に、危機管理能力が低いだけだろ。で、課長。ノールさんは見つかりそうですか?」
「いや…何も感じられない。まだ遠いのかも知れねぇな」

 おいおい、まだ遠いのか? いや待てよ、このドロドロとした流動性のないマグマが脅威ってことは、コイツらはもう死にかけている…っていうことになるよな。
 ニャルほど、面白そうなことができそうだな。

「分かったぜ、この偶像がどういう場所か」
「本当⁉︎」
「分からねぇか?」
「あぁ…ハッキリ言おう、分からない」
「へっ。なら、そのまま分からねぇままで良いぜ。知るだけ無駄だ」

 俺は、分かっちまった。この世界を形成するものが何かを、な。それは、なんとも言えねぇくらい俺には似合わねqqけ結末が起こった証だ。
 なによりコイツらの前では絶対口外できねぇ。こればかりは、何が何でも秘密だ。

「あの…もしかしてっすけど、ノールって-」
「よし、行くぞ! こんな場所、早く抜けてぇしな」
「ドンボ…。そうだな、早く抜けるぞ。キールも、早く会いたいだろ?」
「もちろん! ねっ、早く行こうよ!」

 フォールの一言で、キールは調子に乗って目を閉じて駆け出した。しかし、キールの前にはエルゴがいたためにぶつかった。もちろん、俺の教育で育ったエルゴだ、そう簡単に許すわけはないぜ。

「ちょ、テメェ! 前見て走れや!」
「ご、ごめんね。でも、エルゴのウロコって案外柔らかいんだね。ほら、プニプニ~」
「ちょ、やめ! ダッハハ、くすぐってぇよ!」
「おいキール、はしゃぐのは良いけどよ…その、エルゴが困ってるからその辺にしておいてくれ」
「それもそうだね。アハハ、蛙の子は蛙だね。ホントにそっくり」

 当たり前だろ、そんなことに今更気づくなんて、理解力なさすぎだろ。そう言う俺は、状況把握だけは誰よりも早い自信あるしな。理解力とは、ちっと違うが。
 それはさておき、ズンズン進ませてもらうか。俺の口から語るよりも、そっちのほうが断然マシになるだろ。それに、ただでさえこの空間は時の流れが早い。そうなると、頼りになるのは空だけだ。満月のときまで、残り14日。つまり14時間か。
 辿り着くかが不安だが、辿り着かなきゃなんねぇんだ。やるっきゃねぇ、ってのは楽しみだぜ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。 ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。 ※この作品は別サイトにも掲載しています。 ※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

Cutie Skip ★

月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。 自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。 高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。 学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。 どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。 一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。 こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。 表紙:むにさん

処理中です...