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インタイ

へいきん

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「Qおる?」

朝、学校についてから、自分のクラスに荷物を置く。そして、珍しくI組に入って、中にいるやつにQが来てるか聞いてみる。

「ん?Q?」
「あぁ、由良。由良おらん?」
「由良なら真ん中の後ろから2番目やったはずやで。たしかさっき来とったと思うけど…あっ、おったおった。来たで。」

Qはトイレに行っていたようで、俺がいるドアとは違う方のドアから入ってきた。

「奏やん。珍し。」
「珍しって、そんなにか?んで、ちょっと見て欲しいもんあってな。」

俺は手に持つスマホを見せた。なんのことか察したQは、頷き、自分の席の方に歩いていった。

 昨日撮った動画を探して、Qの前でそれを流す。スタート台の上から撮った映像は正面から、向こう側のプールサイドまで画角に収まっている。

「これ、昨日撮ったやつ?」
「そそ。昨日のメイン。俺的にはフォームマシなったと思うねんけど、客観的な意見欲しくてな。」

Qはそれだけ聞いて、動画に集中し始める。妙な緊張感が漂って、息が詰まりそうだ。

 そして何回か飛ばしながら動画を見て、Qは頷いた。

「ええんちゃう?頭揺れるとこだけは治ってないけど、他はいけてるし。去年の夏ぐらいから悪くなった分取り戻したって感じやな。」

Qは俺にスマホを返してそう言う。

「頭の揺れなぁ。ずっと言われてるけど、どんなけ頑張っても出来ひんねん。」
「まぁ、俺もそんな感じやったから人のこと言われへんねんな。」

Qは笑いながらそう言い、懐かしむような表情をした。

「てか、なんでこの時期に?」

中央大会まで2週間を切ったこの時期にこうして相談に来ている。今から一からフォームを変えようとしたとて、それが馴染むか馴染まないか、そんな時期だ。そのことに不思議に思ったQは、俺にそう訊ねる。

「一言で言うたら答え合わせやな。俺が今までやってきたことが間違いやなかったかの。」

試合前にこうして本気で水泳のことだけを考えるのは久しぶりだ。いつもはどうしても他のことも頭によぎって、水泳だけなんて出来ない。だから今こうしてQに相談に来ていること自体がある意味奇跡だ。

「それで、どうやったんや?」
「まぁ平均点ちょい上ぐらいやな。」

今のタイムじゃ満点だなんて言えない。俺は笑ってそう言って、教室をあとにした。
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