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インタイ

ぜんぶを

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 引退までの練習も、1桁回数になってきた。

「ぃきまぁーす、せーいごー!」

こうやって叫ぶのもあと何回になってくるのだろうか。6年間、毎日のように言ってきたこの言葉も、もう言えなくなると考えると、少し寂しく思えてくる。

 最近話をする中で、俺以外のみんなの引退もいつか分かってきた。楓と夢は中央予定。倫也と和香は対抗まで残るみたいだ。そこら辺まで残るメンバーがいるのなら、次のチームへの引き継ぎもちゃんとできるだろう。

「ラスト!せいごー!」

そしてまた今日の練習も終わりそうになる。また引退までのカウントがひとつ減った。

 壁にタッチして立ち、呼吸を取り戻す。ゴーグルを外し、ドリンクを手に取った。

「お疲れ。」
「お疲れぃ!」
「疲れたー!」

藍と憲士も俺と同じようにプールサイドに両腕を上げ、休憩する。背後ではまだmiddleとsprintが練習していて、俺たちが先に練習が終わった感じだ。

「奏さんって中央までやんな?文Iやのになんでなん?」
「たしかに、それは俺も思ってた。なんでなん?」

そう言われ、俺は返答に困る。理由が「創作をしたいから」なんてまともじゃない理由のはずだ。

「言ってあげたら。奏もその方がスッキリするやろ?」

ずっと練習を見てくれていた楓がそんなことを言う。楓の方を見れば、優しく微笑みかけてくれていた。

「そうやな。これは俺の夢の話なんやけど、創作系の仕事したいねん。」
「創作?」
「ってことは小説とか書くってこと?」
「そゆこと。でも、まだ自分の実力がどんなもんかも知らんし、やからこの夏休みは色々公募とか出したいからクラブ行かれへんってこと。もちろん内部入試の勉強もせなあかんしな。」

そう言って2人に笑いかける。

「なんか分からんけど、出版したらちょうだいな。」
「あっ、今のうちにサイン考えといてや。貰っときたい。」

2人はプールサイドに座ってそんなことを言う。その2人の表情を見ていると、なんか色々考えていたのがアホらしくなってきた。

「ほんまに、お前らと最後に一緒に泳げて良かったわ。ここ最近楽しいから、中央に全部賭けれる。」
「それ言うのはベスト出してからにしてや。」
「そうやで、ベスト出てへんのに何言うてんねん。」
「お前らいきなり辛辣やな。」

そう言って笑い合う。middleとsprintも練習が終わっていて、みんなダウンに行き始めている。

「俺達も行くか。」
「そうやな。」

こうしてまた1日が終わった。
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