上 下
577 / 724
インタイ

しんゆう

しおりを挟む
 練習後、ダウンを泳いでからプールサイドに上がる。

「おい、お前。なんで先上がってんねん。」
「そりゃあ上がるやろ。こちとら現役ちゃうねんぞ。」
「それでもトライアスロンやるんちゃうかったん?」

ピー也は大学に入って、トライアスロンサークルに入ったみたいだ。だから、スイムは1500mは泳がないといけない。って考えたら、うちのdistanceの練習は泳げとかないといけないのだ。

 middleとsprintの練習が終わって、そのメンバーがプールサイドに上がってきた。「づがれだぁ」って声があちこちから上がる。こんな声を上げれるくらいの体力が残っているだけまだマシだろう。本当に疲れたときは何も喋れないんやから。

「そういえば、お前大学上手いことやっていけてるんか?」
「は?俺を誰やと思ってんねん。」
「生粋の変人。」
「分かっとるやんけ。もちろん課題に追われるだけのクソ生活。とりあえず喋れるやつはおるけど、それだけって感じや。」

自慢気に言うが、何の自慢にもなっていない。むしろ、悪あがきって言葉が似合う。

 先生の話を聞いて、ミーティングが終わる。

「既視感の塊。」

ピー也はすぐにシャワーを浴びに行って、そこに座り込んだ。

「恒例行事やもん。ってか、絵空待たせてるからはよ行かなあかんねん。」
「何時待ち合わせなん?」
「45分ぐらいに行くって言うてる。」

今は35分過ぎ。結構急がないと間に合わない。

「まぁ、ちょっとぐらい遅れても多分大丈夫。終わるん遅かったって言うたらいける。」
「彼女待たせるとか彼氏失格やで。」
「今まで何回待たせた思うてんねん。」

「ばぁか」って付け足すピー也。なんでこんな奴に彼女が出来てしまったんだろう。絵空さんってなんでこんな奴のことを好きになったんやろう。

「めっちゃ失礼なこと考えてるやろ。」
「お前に対して失礼って感情はない。ほら、待たせてるんやったらさっさと行きな。」

「分かった分かった」と立ち上がり、体を拭いて更衣室に消えていく。その後ろ姿を眺めていたら、楓が近づいてきた。

「楓やろ。ピー也のこと呼んだん。」
「せやで。どうやった?嬉しかった?」
「そこまでせんでも調子ぐらい自分で上げるって。」
「でも、今日タイム良かったやろ。」

楓はいつも通りdistanceのタイムをとってくれていた。だから、もちろん俺のタイムが良かったことも知っているだけで。

「本当に田辺さんがいるだけで1秒も2秒も変わってくるんやから。このまま中央大会まで行ってや。」
「もちろん。やっぱ、あいつに勝ちたいから。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

処理中です...