陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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セナカヲ

私たちは球技大会Ⅲ③

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 時間は残り半分。ついにソフトバレーボールが追加される。

「きい。」
「まかせて。」

きいは飛んできたボールを取って、そして握る。去年Qがやっていたあれだ。きいもあれができるのだろうか。

 きいは、ボールを握ってそのまま投げる。きいの手から離れたボールは1度浮き上がって、それから沈んだ。

「出来た!」

きいは嬉しそうに飛び跳ねる。誰にも当たらなかったが、確かにQと同じような軌道を描いていた。この子は本当にすごい。普段の体育はそんなに目立っていないのに、この球技大会はめちゃくちゃ目立っている。

 他の女子はやはりソフトバレーボールを上手く投げるのは難しいようで、投げてもへなへなと落ちていって、コート上を転がっている。そして私の方にもボールが転がってきた。

 私はボールを握る。あそこまで凹まそうと思ったらそれなりの力が必要で、すぐに指が攣りそうになる。正面からは、ずっと入っているハンドボールを持った子がこっちを向いていた。気づいた私はそっちを睨んで、その子を制止させる。その子は固まってボールを持ったまま後ろに下がっていった。

 私としては今すぐにでも投げて欲しい。投げた後の隙を突かれたら、今なら当たる自信がある。

 でも、投げてきそうになかったので私が先にその子を狙って投げた。ボールは揺れて落ち、そして曲がり、その子に当たった。

『うおおおお!』

我ながらスピードも変化量も申し分ない。Qと奏の方を見る。2人はこっちを見てサムズアップしていた。どうやら出来がいいみたい。

「ラスト1分!男子たち楽にしてやろう!」

私がそう声をかけると、チーム全体が盛り上がる。今、ボールは私たちが2球とも持っている。攻めて攻めて、最後に笑うのが私たちであるように、どんどん当てていく。そしてI組の内野は残り3人になってホイッスルが鳴った。

 結果は8ポイント差。ひっくり返される可能性はあるが、少なくとも奏たちは少しは楽になっただろう。

 そして男子女子のコートの入れ替え。ちょうど私の方に向かって歩いてきた奏とハイタッチする。

「負けたら?」
「まず負けんなよ。でも、負けたらダッツな。」

1年の頃と同じ約束。3年間を経て強くなった体は、あの頃みたいに倒れたりしない。でも結局私たちは私たちのままで、子供の頃のままなんだ。

「分かったよ。負けたら奢ってやる。」

奏は笑いながらそう言う。そしてコートに入っていった。

「どうせ勝っても奢ってくれるくせに。カッコつけたがりなんやから。」
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