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セナカヲ
私たちは球技大会Ⅲ②
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私が投げたボールは真っ直ぐ花胡の方へ。変な小細工はしない。ただ直球の、力と力のぶつかり合いでいい。
私の中でこれ以上のものはないほどの球は、花胡の鳩尾の近くに飛んでいき、ドスっと鈍い音が鳴った。花胡はボールを抱えて受け止めていて、笑っていた。
「楓ぇぇぇ!」
そのままこっちに走ってきて、私目掛けて投げてくる。
次の瞬間にはボールは私の腕の中にある。ドスっと重い衝撃がお腹に広がり、それを受け止めると、ボールは私の腕の中で静かになった。
「もういっちょ!」
そのまま私はまた花胡に投げる。何も言っていないけど、確かにある共通認識。この勝負が決まるまで、勝負は始まらない。
1球ごとに歓声が上がる中、何回も何回も投げあって、そして10回目を超えた。私も花胡も疲れとかはないだろう。ただ楽しいという気持ちだけで、マネージャーの私でも、帰宅部の花胡でも、こんなに長く動き続けられる。
そして私が投げたボールは最初よりもさらに威力を増し、花胡の鳩尾に飛び込んでいく。花胡は笑いながら、飛んでくる球をキャッチしようとする。けれど、そのボールには花胡も反応出来ずに、零してしまった。
『うおおおおおお!』
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』
男子たちの歓喜の声と落胆の声が響く。花胡は笑って「ごめん!」と言いながら外野に出ていき、すぐに花胡にボールが回った。私とのタイマンが終わったからか、やはり他の子を狙う。ボコンと鈍い音と共に、私たちの内野が少しずつ削られていく。
でも、私たちの攻撃担当は私だけでは無い。
去年の3位決定戦。その戦いで全員の印象に残ったその1人が橋本紀乃だ。
「きい!いったれ!」
ボールを持ったきいは、走りながらコートの中央へ。そして投げた。
ボールは少し高めの軌道をとり、そして曲がりながら落ちてくる。ボールは少し固まっていた集団のところに落ち、そして当たった。トリプルだ。
「相変わらず気持ち悪い球してる。」
1度後ろに退いてきたきいにそう言う。
「それは褒め言葉やんな?」
「もちろん褒め言葉やで。」
きいは笑いながら目でボールを追う。そして時間は半分を経過した。
私の中でこれ以上のものはないほどの球は、花胡の鳩尾の近くに飛んでいき、ドスっと鈍い音が鳴った。花胡はボールを抱えて受け止めていて、笑っていた。
「楓ぇぇぇ!」
そのままこっちに走ってきて、私目掛けて投げてくる。
次の瞬間にはボールは私の腕の中にある。ドスっと重い衝撃がお腹に広がり、それを受け止めると、ボールは私の腕の中で静かになった。
「もういっちょ!」
そのまま私はまた花胡に投げる。何も言っていないけど、確かにある共通認識。この勝負が決まるまで、勝負は始まらない。
1球ごとに歓声が上がる中、何回も何回も投げあって、そして10回目を超えた。私も花胡も疲れとかはないだろう。ただ楽しいという気持ちだけで、マネージャーの私でも、帰宅部の花胡でも、こんなに長く動き続けられる。
そして私が投げたボールは最初よりもさらに威力を増し、花胡の鳩尾に飛び込んでいく。花胡は笑いながら、飛んでくる球をキャッチしようとする。けれど、そのボールには花胡も反応出来ずに、零してしまった。
『うおおおおおお!』
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』
男子たちの歓喜の声と落胆の声が響く。花胡は笑って「ごめん!」と言いながら外野に出ていき、すぐに花胡にボールが回った。私とのタイマンが終わったからか、やはり他の子を狙う。ボコンと鈍い音と共に、私たちの内野が少しずつ削られていく。
でも、私たちの攻撃担当は私だけでは無い。
去年の3位決定戦。その戦いで全員の印象に残ったその1人が橋本紀乃だ。
「きい!いったれ!」
ボールを持ったきいは、走りながらコートの中央へ。そして投げた。
ボールは少し高めの軌道をとり、そして曲がりながら落ちてくる。ボールは少し固まっていた集団のところに落ち、そして当たった。トリプルだ。
「相変わらず気持ち悪い球してる。」
1度後ろに退いてきたきいにそう言う。
「それは褒め言葉やんな?」
「もちろん褒め言葉やで。」
きいは笑いながら目でボールを追う。そして時間は半分を経過した。
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