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セナカヲ

私たちは球技大会Ⅲ①

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―時間は遡って決勝前

「楓、相手があいつらって…」
「うん…燃える。」

私たちの相手はQたち去年の優勝メンバーを多数擁するI組。予選でもぶつかったが、私たちの惨敗で、去年から今まで1回もQたちには勝てていない。

 それに対して私たちG組は、きいや私たちなど、1年のときの優勝メンバーが揃っている。勝てない勝負ではないはずだ。

 目の前でやっている3位決定戦はあともう少しで終わりそう。結果もほぼ決まっていて、桜たちH組が勝ちそうだ。

「みんな、ちょっと集まって。」

最後の作戦会議。私はみんなにこう呼びかけた。

「全力で楽しもう!」

 ピーッとホイッスルが鳴って、目の前の試合が終わる。桜たちは3位。2年連続のブロンズだ。

 そして私たちのチームがコールされる。コートに向かって歩いていると、桜と目が合った。

「本当は久志に勝って欲しいけど、全力で倒してね。久志が負けてる姿、見てみたいから。」
「桜ってもしかして結構S?」
「さぁ。でもこれで久志たちが勝ったら3連覇やろ?それはちょっと嫌やもん。」
「嫌って。ちょっと彼女さん?彼氏の勝利は願わんの?」
「それは建前であって、私のエゴは楓たちに勝って欲しいってこと。じゃ、頑張ってね!」

そう言いながらヒラヒラと手を振り、自分のスタンドに戻っていく。

「相変わらず変なやつ。」

でも、むしろこんな感じになったのは久志のおかげ的なところもある。

「まぁ、親友に応援されたからには勝ちますか。」

私はぐっと伸びをしてコートに入った。

 去年と今年でI組はそんなにメンバーが変わっていない。理系2クラスはだいたい半々位でシャッフルされるはずなのに、いざ蓋を開けてみれば7:3くらいだ。

「整列!」

審判である和香が声をかける。そして私たちは向かい合った。

『お願いします!』

 まずは私たち女子の勝負。それぞれのコートに分かれて、外野に3人出る。ボールはこっちからだ。

 ボールを持った私は、花胡の方を指さす。すると笑いながら応えてくれた。やっぱり決勝の始まりはこれじゃないと始まらない。

 周りの女子も空気を読んでくれて、左右に分かれて私たちの邪魔をしないようにしてくれる。

「それでは、決勝戦。スタートです。」

そんなアナウンスとともにホイッスルが鳴った。

 私は1度呼吸を整えてから花胡の方を見る。めちゃくちゃ笑っていて、この勝負を純粋に楽しんでいる。私の顔はどうだろう。強ばっているかな?緊張してるかな?でも、そんなの関係ない。全力で楽しむ。それだけだ。
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