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セナカヲ

俺たちは球技大会①

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「みんな!ごめん!勝って!」

その言葉は、俺たちの単純な脳を呼び起こすのには十分なものだった。

 三崎透華。この球技大会でクラスで注目されるようになった女子の1人だ。バレー部に所属していて、線の細い黒髪ボブの女子。身長はそこまで大きくなく、クール系な女子。

 だからこそ、クラス内での株も上がり続けている。それこそ、杏や木美野と並ぶくらい。

「お前ら!死んでも勝つぞ!」
『うおおおおお!』

コート内の男子たちのボルテージは最高潮。ここでいい姿を見せたら間違いなく良いアピールになる。馬鹿げた男子たちのクソ理論だが、高校生男子の頭なんてそんなものだ。

 幸いにもF組には瞬がいる。さっきがこっちボールからだったから次は向こうボールから。瞬がボールを持って俺を指さした。

 俺は前に出る。タイマンだ。

 ホイッスルが鳴ると同時に瞬は投げてきた。ボールは真っ直ぐ俺の腰あたりに。体勢を低くして、それは受ける。ドスっと鈍い音が響き、俺の腕の中にボールが収まった。

 瞬は笑いながら後ろに退こうとする。が、それを俺は視線で引き止めた。やられっぱなしは嫌やからな。

 俺は瞬目掛けてボールを投げる。ボールは真っ直ぐ瞬に飛んでいき、手元で曲がった。

「っし!」
『うおおおおおお!』

そんな感じで俺たちの勝負は膜が開けた。

 うちのクラスも、F組も、運動部所属のやつが多くて、全員がちゃんと戦っている。少し勢いのないフライボールくらいなら、トスして勢いを殺し、ボールを手元に収める。手元に来たボールはしっかりキャッチする。瞬が当たって以降、両チーム誰も当たっていない。

 そんな戦いは、本当にしんどい。休憩している暇がなく、常にボールを追っていないと分からなくなるから。

 そして、そんな戦いを繰り広げている俺たちには、共通の認識があった。『次の1人を当てたら勝てる』そんな意識は自然と全員が感じているだろう。

 俺のところにボールがきた。キャッチして、そして俺は考える。次はどのボールの方がいいだろう。曲げるボールはもう結構使っている。それなら浮き上がるボール?今はみんな下に下に意識があるから少し上に浮かしてみたらどうだろうか。

 俺は杏がやっていたボールを考えながら、ボールを投げる。ちなみに、やったことはない。でも、何故かできる気がしていた。

 ボールは真っ直ぐ飛んでから曲がって、そして浮いた。

 1人の肩にボールが当たる音がして、地面に転がる。拮抗していた状態の終わりだ。

『うおおおおおおおおお!』
「ナイス!」
「ないすぅー!」

1度後ろに下がると、そんな言葉をかけられる。そして、時間も残り半分に。あのボールが投入される時間だ。
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