陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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セナカヲ

私たちは球技大会⑥

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 決勝戦の相手は、決勝にふさわしい相手となっていた。こっちが当てたら当て返してくる。外野も使った変則的な攻撃は私たちの体力を確実に削っていく。その度に私たちは高揚感に浸っていた。

「透華!」
「ナイス!」

外野の人数なんか数えている暇はない。でも恐らく同じくらいかこっちが少し負けているかだろう。

『2球目投入します!』

そうアナウンスがかかって入ってきたのはソフトバレーボール。それをキャッチした相手チームのエースが投げるけど、球威もそこまでなく、私の目の前で落ちる。

 もう1球は私たちのチームの外野が持っている。少し暇があるから、試してみるか。

 私はボールを握り、摘んで持った。狙いはどことか考えない。ただ誰かに当たれと願いながら投げる。

 放たれたボールは無回転で揺れながら相手チームのメンパーが固まっているところへ。そして当たった。

「っし!」
「杏!それどうやって投げたん?」
「握り潰して投げただけやで。」

外野にいたなのはちゃんも1人当てて、少しこっちが優勢になった。

 2球とも相手チームに回ったから1度後ろに下がりながらそう真奈と話す。

 このボールを見たのはバカ兄たちのドッジボールに入っているとき。バカ兄たちの担任の先生がそうやって投げているのを見て、みんな真似した。もちろん私もやろうと思ったが、そのときは握力が足りず、握れなかったのだ。

 でも、高校生となった今、力も強くなったからやってみたら出来た。

「私にもできるかな?」
「真奈くらい力強かったらできるんちゃう?」

真奈はこう見えて力が強い。握力測定はもちろん10点を取る。そんな真奈ならできてしまうだろう。

 飛んでくるボールを避けて、ソフトバレーボールはキャッチする。そして真奈に渡した。

「やってみたら。」

そう言うと、真奈はボールを握り、そして投げる。ボールは少し回転し、私よりは変化量が少ないが、それでも十分魔球になっている。

「やるやん。」

外野から飛んできた普通のボールをキャッチしながらそう言う。そして振り返りざまにフライを投げる。できる限り低く、速く。私が投げたところには透華がもういて、少し後ろに下がってステップを踏みながらキャッチ。勢いそのままに投げる。

 透華の投げたボールは真っ直ぐ、そして低く飛び、相手の4番手くらいの子の足元を当てた。

「ごめーん!」
「ええよええよ。」
「1人ぐらいどうにかなる。」

予定では主力は1人も削らず終わる。そう決めていたが、1人出てしまった。これからは挟まれることになるかもしれないが、あと1分耐えたらいい。

 そう甘く考えていた。
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