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セナカヲ
俺たちは京都⑤
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「ぃらっしゃいませ~!何名様で!」
「4人です。」
「ではこちらのテーブル席に。4名様入りまーす!」
『ぃらっしゃいませ~!』
近くの天上天下についてみれば、まだ混む前だったようで、テーブル席が一つ空いていた。
天上天下烏丸店。二条城のほど近くにあるこの店は、外国人観光客が数組と、いかにもラーメンを食べそうなおっちゃんで溢れそうになっていた。
「みんな何食べる?」
「私、餃子セットでこってり増量。細麺で。」
そう即答する戸津井さん。その言葉に俺たちは驚かざるを得なかった。ここのこってり増量はスープがスープじゃない。麺についてくる粉みたいなものなのだ。それを知りながらこのチョイスをする戸津井さんは笑っている。
「えっと…船戸さんは?」
「私は普通のこってりでニンニク抜き。麺は普通。だけでいいかな?」
船戸さんはまだ普通のチョイスをする。ニンニク抜きなのはこの後のこととか考えているからだろう。うん。実にいい。
「聡はどうする?」
「俺はこってりのチャーハン半ギョーザ定食。麺は細麺にしよ。」
「んじゃ俺と同じやな。じゃあ頼むで。」
店員さんを呼んで注文する。次第に店は混み始め、店の外に列ができ始めた。
「俺たちギリギリやったみたいやな。」
「危ない危ない。」
ラーメンが出来上がるまでそんなに時間はかからなかった。人気店だからだろうか、回転率を上げるために提供までの時間が短い。
「お待たせしましたー。こってり増量の細麺1つと、こってりニンニク抜きの普通麺、こってりの細麺2つですね。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
「サイドメニューのほうは後から持ってきますので、もう少しお待ちください。」
店員さんが伝票を置いて戻っていく。それを見てから俺たちはスマホを取り出して、写真を撮る。
「くるみ、ヨダレ出てる。」
「ふぇっ!ごめんごめん。お見苦しい所を。」
写真を撮りながら戸津井さんはヨダレを垂らし、聡は呼吸が荒くなっている。
「2人が我慢できそうにないし食べるか。」
「いただきまーす!」
『いただきます。』
とりあえず麺を持ち上げてみる。するとドロっとしたスープが麺に絡んで、麺と一緒に持ち上げられた。
「これは予想以上やな。」
「くるみのやつは…うわぁ。ほぼスープやん。」
「ん?そうかな?」
ズズズッと音を立てて、麺とスープの塊が口の中に吸い込まれていく。その瞬間、戸津井さんは満悦そうな顔に変わった。
「うまぁ。もう死んでもええわ。」
「ダメだ。くるみが昇天してる。」
魂が抜けていくのが見えそうなほどいい笑顔になって、ラーメンを食べるだけのロボに変わってしまった。
「うまぁ。戸津井の言うてること分かるわぁ。」
「やろ~。」
隣に座っている聡も笑いながら麺をすすり続けている。
俺の正面に座っている船戸さんも、覚悟を決めて麺をすする。そして、無言のまま食べ進めていく。
「花胡、どうよ。ハマるやろ?」
「うん。このドロドロなんがいい感じ。」
もう完全に麺を食う人の顔になっている。このままキャラ崩壊しそうだ。
そして、持ち上げてすすってみる。その瞬間、脳を殴られたような感じがした。強烈なパンチのスープ。麺とのバランス。何よりその濃さ。飽きそうなのに飽きないこの味は、さすが人気店といったところだろうか。
「うまぁ。」
「4人です。」
「ではこちらのテーブル席に。4名様入りまーす!」
『ぃらっしゃいませ~!』
近くの天上天下についてみれば、まだ混む前だったようで、テーブル席が一つ空いていた。
天上天下烏丸店。二条城のほど近くにあるこの店は、外国人観光客が数組と、いかにもラーメンを食べそうなおっちゃんで溢れそうになっていた。
「みんな何食べる?」
「私、餃子セットでこってり増量。細麺で。」
そう即答する戸津井さん。その言葉に俺たちは驚かざるを得なかった。ここのこってり増量はスープがスープじゃない。麺についてくる粉みたいなものなのだ。それを知りながらこのチョイスをする戸津井さんは笑っている。
「えっと…船戸さんは?」
「私は普通のこってりでニンニク抜き。麺は普通。だけでいいかな?」
船戸さんはまだ普通のチョイスをする。ニンニク抜きなのはこの後のこととか考えているからだろう。うん。実にいい。
「聡はどうする?」
「俺はこってりのチャーハン半ギョーザ定食。麺は細麺にしよ。」
「んじゃ俺と同じやな。じゃあ頼むで。」
店員さんを呼んで注文する。次第に店は混み始め、店の外に列ができ始めた。
「俺たちギリギリやったみたいやな。」
「危ない危ない。」
ラーメンが出来上がるまでそんなに時間はかからなかった。人気店だからだろうか、回転率を上げるために提供までの時間が短い。
「お待たせしましたー。こってり増量の細麺1つと、こってりニンニク抜きの普通麺、こってりの細麺2つですね。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
「サイドメニューのほうは後から持ってきますので、もう少しお待ちください。」
店員さんが伝票を置いて戻っていく。それを見てから俺たちはスマホを取り出して、写真を撮る。
「くるみ、ヨダレ出てる。」
「ふぇっ!ごめんごめん。お見苦しい所を。」
写真を撮りながら戸津井さんはヨダレを垂らし、聡は呼吸が荒くなっている。
「2人が我慢できそうにないし食べるか。」
「いただきまーす!」
『いただきます。』
とりあえず麺を持ち上げてみる。するとドロっとしたスープが麺に絡んで、麺と一緒に持ち上げられた。
「これは予想以上やな。」
「くるみのやつは…うわぁ。ほぼスープやん。」
「ん?そうかな?」
ズズズッと音を立てて、麺とスープの塊が口の中に吸い込まれていく。その瞬間、戸津井さんは満悦そうな顔に変わった。
「うまぁ。もう死んでもええわ。」
「ダメだ。くるみが昇天してる。」
魂が抜けていくのが見えそうなほどいい笑顔になって、ラーメンを食べるだけのロボに変わってしまった。
「うまぁ。戸津井の言うてること分かるわぁ。」
「やろ~。」
隣に座っている聡も笑いながら麺をすすり続けている。
俺の正面に座っている船戸さんも、覚悟を決めて麺をすする。そして、無言のまま食べ進めていく。
「花胡、どうよ。ハマるやろ?」
「うん。このドロドロなんがいい感じ。」
もう完全に麺を食う人の顔になっている。このままキャラ崩壊しそうだ。
そして、持ち上げてすすってみる。その瞬間、脳を殴られたような感じがした。強烈なパンチのスープ。麺とのバランス。何よりその濃さ。飽きそうなのに飽きないこの味は、さすが人気店といったところだろうか。
「うまぁ。」
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