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セナカヲ
私はバカ兄の部屋①
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やはりと言うべきか、残念ながらと言うべきか、音楽担当になった磯浦仁先生から、あの課題が出されてしまった。
『1曲書いてきて~』
なんて簡単に言ってきたけれど、私にはそんな経験もないし、そんな経験をしている友達もいない。ただ、この家の住人たちを除いては。
久しぶりにやってくるバカ兄の部屋。前来たのはいつぶりだろうか。思い出せそうにもない。
「嫌やなぁ。バカ兄にこういうこと頼むのは。」
バカ兄に対してこんな態度をとっている手前、何か頼み事をするのにも覚悟がいるのだ。
私はコンコンとドアをノックした。
「ん?杏か?入れ~!」
ドアの奥からそんな声がして、私はドアを躊躇なく開ける。そこにいたのは勉強をしているバカ兄と、ベッドで横になってくつろいでいる桜さんだった。
「どーゆー状況?」
「ん?いつも通りだが。」
「うん。いつも通り。」
目の前に広がっている光景に疑問しか出てこない。だけど、どこかしっくりきてしまっている。
「んで、なんか用か?」
「まぁ、音楽の…」
「あぁ納得。イソジンやろ?ってことはあれだな。お題は?」
私が話す前に全部伝わったようで、もうペンを止めて私の方を見ている。桜さんもスマホを閉じて起き上がった。
「『自分の春』とは?」
「「……………」」
私がお題を伝えると、2人の顔が歪んだ。
「「面倒くさっ!」」
揃って2人はそう言う。たしかにこの時期に『春とは?』みたいなお題を出すのは当たり前だと思うけど、『春』にも色々あるわけで、それを自分なりに考えてこいってことなんだろう。面倒くさっ!
「それで、杏ちゃんはどんな『春』を書こうと思ってるん?」
「私は…やっぱり『青春』かな?1番簡単そうやし。」
「1番…簡単?」
桜さんはめっちゃ驚いている。
私の中にあるのは青春の煌めき。キラキラしていて、自分の好きなことに夢中で、最高に楽しい。そんな青春だ。
「んじゃ、この紙に青春のキラキラの代表例書いてみそ。」
「書いてみそ。」
2人は紙とペンを私に渡して、ローテーブルを空ける。私はそこに座って、書こうとした。
でも、あんまり書けなかった。青春の煌めきなんて3つくらいしか出てこなかった。『部活』とか『恋人』とか『友情』とか、そんな感じのことしか出てこない。それがどうだったとかなんて書けそうにもなかった。
「やっぱり書けんか。」
「うん。なんかごめん。」
「いいのいいの。私たちだってそうやから。だから青春の暗いところを思い浮かべてみて。」
「暗いところ?」
「そう。暗いところ。悩みとか、葛藤とか。」
私はもう一度紙に向かう。すると、なんか溢れてきた。
『1曲書いてきて~』
なんて簡単に言ってきたけれど、私にはそんな経験もないし、そんな経験をしている友達もいない。ただ、この家の住人たちを除いては。
久しぶりにやってくるバカ兄の部屋。前来たのはいつぶりだろうか。思い出せそうにもない。
「嫌やなぁ。バカ兄にこういうこと頼むのは。」
バカ兄に対してこんな態度をとっている手前、何か頼み事をするのにも覚悟がいるのだ。
私はコンコンとドアをノックした。
「ん?杏か?入れ~!」
ドアの奥からそんな声がして、私はドアを躊躇なく開ける。そこにいたのは勉強をしているバカ兄と、ベッドで横になってくつろいでいる桜さんだった。
「どーゆー状況?」
「ん?いつも通りだが。」
「うん。いつも通り。」
目の前に広がっている光景に疑問しか出てこない。だけど、どこかしっくりきてしまっている。
「んで、なんか用か?」
「まぁ、音楽の…」
「あぁ納得。イソジンやろ?ってことはあれだな。お題は?」
私が話す前に全部伝わったようで、もうペンを止めて私の方を見ている。桜さんもスマホを閉じて起き上がった。
「『自分の春』とは?」
「「……………」」
私がお題を伝えると、2人の顔が歪んだ。
「「面倒くさっ!」」
揃って2人はそう言う。たしかにこの時期に『春とは?』みたいなお題を出すのは当たり前だと思うけど、『春』にも色々あるわけで、それを自分なりに考えてこいってことなんだろう。面倒くさっ!
「それで、杏ちゃんはどんな『春』を書こうと思ってるん?」
「私は…やっぱり『青春』かな?1番簡単そうやし。」
「1番…簡単?」
桜さんはめっちゃ驚いている。
私の中にあるのは青春の煌めき。キラキラしていて、自分の好きなことに夢中で、最高に楽しい。そんな青春だ。
「んじゃ、この紙に青春のキラキラの代表例書いてみそ。」
「書いてみそ。」
2人は紙とペンを私に渡して、ローテーブルを空ける。私はそこに座って、書こうとした。
でも、あんまり書けなかった。青春の煌めきなんて3つくらいしか出てこなかった。『部活』とか『恋人』とか『友情』とか、そんな感じのことしか出てこない。それがどうだったとかなんて書けそうにもなかった。
「やっぱり書けんか。」
「うん。なんかごめん。」
「いいのいいの。私たちだってそうやから。だから青春の暗いところを思い浮かべてみて。」
「暗いところ?」
「そう。暗いところ。悩みとか、葛藤とか。」
私はもう一度紙に向かう。すると、なんか溢れてきた。
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