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2年生編終了記念 幕間
幕間④ 兄と妹
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4月になって、いよいよ杏にも高校生としての意識が芽生え始めてきた頃。俺は杏に連れられて、梅田に来ている。
「バカ兄、早く早く!」
「分かった。分かったからそんなに急ぐな。」
高校生になったから水着を新調したいとのことでグランオーバー大阪にある水着のブランドの直営店に来た俺たちは、その店内に足を踏み入れた。
(懐かしいな。こんな店。)
俺も俺で水泳経験者なので、この店に来たこともある。このブランドの店は大阪にはここしかないから。
ここのブランドは生地がしっかりしていて、何回使ってもヘタレてこない。そして軽い。そんな素材なのだ。
「どれにしよっかな~!いっぱいあるなぁ~!」
杏は今まで近場の安い水着で練習してきたから、こういう店のちゃんと値の張るやつを買うのは初めてだ。
「とりあえずこれは確定として…」
まず手に取ったのは黒い水着。1シーズン前に、日本代表が着ていた水着の練習用、それの新作だ。黒い生地に白の十字。シンプルかつかっこいい、いいデザインだ。
そんな杏の姿を店員さんが微笑ましく見ているのが見えた。
「どうも。」
「お久しぶりですね。」
その店員さんは、どこか懐かしむような表情で俺の事を見ている。まさか俺の事を覚えているのか?
「4年ぶりですか。あれ以来いらっしゃらないのでどうしたのだろうかと思っていましたよ。」
「ちょっと怪我してしまって。」
「それは失礼しました。」
軽く会話をしながら歩いてくる。
「妹さんですか?」
「はい。この春から高校生になるんで、水着を新調したいと。ついでにキャップと。ゴーグルはすみません。通販で買ってしまって。」
「いえいえ。ゴーグルは自分に合ったところのものを揃えるべきなので。」
あれこれところころ表情を変えながら水着を手に取っていく杏。乾かして、使ってって考えたら4枚ほどあれば足りるので、絞っているのだろう。
「よし、これで決まり!バカ兄、これ似合うかな?」
「ん?じゃあ。」
「試着してみますか?」
店員さんが笑ってそう言う。杏は不安そうに俺を見てくるので、軽く頷いた。
試着室に入っていく杏を見ながら、店員さんに話をする。
「出来れば試合用も買ってあげたいんですけど。」
「そうですか。種目は何を?」
「分かりません。でも距離は長くなると思います。」
『僕みたいに』って言葉は言わない。本当は俺の後ろを追いかけて欲しくはなかった。でも、杏が望んでそうしているなら、俺は何も言わない。
「予算は?」
「親が死ぬほどお金持たせてくれているので、足ります。何を薦められても。」
「じゃあこれですかね。」
店員さんが手に取ったのは鮮やかな青に黄色いブランドロゴ。1枚の布から作られたその水着は吊るしているだけで立体的なフォルムをしている。
「柔らかくて締まっていて、どんな距離でも泳げる。種目なんか問わない。私のイチオシです。」
「たしか、僕の時もこれを薦めていただいたような。」
この水着の男性用ならまだ家にある。あの時は出たての頃で、みんな履いていた。
「使い心地良かったでしょう?」
「はい。めちゃくちゃ泳ぎやすかったです。」
懐かしくて、生地に触れてみる。やっぱりいい生地だ。
「あいつならSSかな?じゃあ、値段は伏せといてください。」
杏がいない間に買っておく。あとで袋の中に入れてもらうように店員さんに伝えておいて。
「バカ兄!似合ってる?」
「あぁ似合ってる。」
黒に白の十字のあの水着を着た杏はとてもかっこよくて、可愛かった。
そのあと、キャップを買って店を後にする。杏はこれからは自分で来ても大丈夫なようにアプリ会員になっていた。
「ふふふ。こんな可愛い水着着てたら、真奈どんな顔するかな?」
「そら驚くだろうよ。でも、真奈ちゃんも買ってるんちゃう?こんな感じの。」
「そーかな?真奈ってそういうの気にしないと思うんだけどな。」
そう言うお前もそうだよ。とは言えない。殴られる未来が見えている。
買った水着を取り出そうと袋の中を漁っている杏。そんな杏が少し不思議そうな顔をした。
「ん?こんなん買った覚えないで。」
取り出したのは黒い箱。そこにはしっかりと商品の名前がプリントされていた。
「Air2?もしかして、試合用!?」
「入学祝いまだやったやろ。俺からの入学祝い。」
「でも、さすがに私でもこれがどんな水着かは知ってるで。さすがに受け取れないって!」
「いや、俺からの応援の気持ちや。受け取ってくれ。」
杏は潤んだ目で俺の事を見る。
「ありがと。バカ兄。」
「どういたしまして、だ。」
2人並んで駅を目指す。久しぶりにこういうのをするのも悪くないなと思っていたら、げしっとふくらはぎを蹴られた。
「バカ兄、早く早く!」
「分かった。分かったからそんなに急ぐな。」
高校生になったから水着を新調したいとのことでグランオーバー大阪にある水着のブランドの直営店に来た俺たちは、その店内に足を踏み入れた。
(懐かしいな。こんな店。)
俺も俺で水泳経験者なので、この店に来たこともある。このブランドの店は大阪にはここしかないから。
ここのブランドは生地がしっかりしていて、何回使ってもヘタレてこない。そして軽い。そんな素材なのだ。
「どれにしよっかな~!いっぱいあるなぁ~!」
杏は今まで近場の安い水着で練習してきたから、こういう店のちゃんと値の張るやつを買うのは初めてだ。
「とりあえずこれは確定として…」
まず手に取ったのは黒い水着。1シーズン前に、日本代表が着ていた水着の練習用、それの新作だ。黒い生地に白の十字。シンプルかつかっこいい、いいデザインだ。
そんな杏の姿を店員さんが微笑ましく見ているのが見えた。
「どうも。」
「お久しぶりですね。」
その店員さんは、どこか懐かしむような表情で俺の事を見ている。まさか俺の事を覚えているのか?
「4年ぶりですか。あれ以来いらっしゃらないのでどうしたのだろうかと思っていましたよ。」
「ちょっと怪我してしまって。」
「それは失礼しました。」
軽く会話をしながら歩いてくる。
「妹さんですか?」
「はい。この春から高校生になるんで、水着を新調したいと。ついでにキャップと。ゴーグルはすみません。通販で買ってしまって。」
「いえいえ。ゴーグルは自分に合ったところのものを揃えるべきなので。」
あれこれところころ表情を変えながら水着を手に取っていく杏。乾かして、使ってって考えたら4枚ほどあれば足りるので、絞っているのだろう。
「よし、これで決まり!バカ兄、これ似合うかな?」
「ん?じゃあ。」
「試着してみますか?」
店員さんが笑ってそう言う。杏は不安そうに俺を見てくるので、軽く頷いた。
試着室に入っていく杏を見ながら、店員さんに話をする。
「出来れば試合用も買ってあげたいんですけど。」
「そうですか。種目は何を?」
「分かりません。でも距離は長くなると思います。」
『僕みたいに』って言葉は言わない。本当は俺の後ろを追いかけて欲しくはなかった。でも、杏が望んでそうしているなら、俺は何も言わない。
「予算は?」
「親が死ぬほどお金持たせてくれているので、足ります。何を薦められても。」
「じゃあこれですかね。」
店員さんが手に取ったのは鮮やかな青に黄色いブランドロゴ。1枚の布から作られたその水着は吊るしているだけで立体的なフォルムをしている。
「柔らかくて締まっていて、どんな距離でも泳げる。種目なんか問わない。私のイチオシです。」
「たしか、僕の時もこれを薦めていただいたような。」
この水着の男性用ならまだ家にある。あの時は出たての頃で、みんな履いていた。
「使い心地良かったでしょう?」
「はい。めちゃくちゃ泳ぎやすかったです。」
懐かしくて、生地に触れてみる。やっぱりいい生地だ。
「あいつならSSかな?じゃあ、値段は伏せといてください。」
杏がいない間に買っておく。あとで袋の中に入れてもらうように店員さんに伝えておいて。
「バカ兄!似合ってる?」
「あぁ似合ってる。」
黒に白の十字のあの水着を着た杏はとてもかっこよくて、可愛かった。
そのあと、キャップを買って店を後にする。杏はこれからは自分で来ても大丈夫なようにアプリ会員になっていた。
「ふふふ。こんな可愛い水着着てたら、真奈どんな顔するかな?」
「そら驚くだろうよ。でも、真奈ちゃんも買ってるんちゃう?こんな感じの。」
「そーかな?真奈ってそういうの気にしないと思うんだけどな。」
そう言うお前もそうだよ。とは言えない。殴られる未来が見えている。
買った水着を取り出そうと袋の中を漁っている杏。そんな杏が少し不思議そうな顔をした。
「ん?こんなん買った覚えないで。」
取り出したのは黒い箱。そこにはしっかりと商品の名前がプリントされていた。
「Air2?もしかして、試合用!?」
「入学祝いまだやったやろ。俺からの入学祝い。」
「でも、さすがに私でもこれがどんな水着かは知ってるで。さすがに受け取れないって!」
「いや、俺からの応援の気持ちや。受け取ってくれ。」
杏は潤んだ目で俺の事を見る。
「ありがと。バカ兄。」
「どういたしまして、だ。」
2人並んで駅を目指す。久しぶりにこういうのをするのも悪くないなと思っていたら、げしっとふくらはぎを蹴られた。
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