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アケボノ
1個前③
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「俺、いや、俺たちからはこれだな。」
目の前に置いたのは1つの箱。サイズこそ小さいが、それなりのものは選んだ。
「ん?2人で1つ?」
「そそ。一緒に買いに行って、別行動やったんやけど、ちょっと高いかなって渋っていたのがこれで、ちょうど久志が来て、2人で1つ買うことになってん。」
「まぁ、ものはちゃんと悪いものではないから許してくれ。」
「いや、プレゼントに許すも何もないと思うんやけど。」
桜と顔を見合わせて、2人で箱を持つ。
「「誕生日おめでとう、きい。」」
「ありがとう、2人とも。」
きいは嬉しそうに受け取ると、「開けていい?」って目で訴えてくる。
「いいよ。」
笑ってそう言うと、また綺麗にラッピングを剥がした。そして、箱を開ける。
「これは、ハンドクリーム?しかも匂いが気にならないやつ。」
「おっ、知ってるんか?」
「うん。最近料理するようになって、手が荒れてきたから、暇な時探しててん。明日ぐらいで買いに行こう思うてたし。」
きいは大事そうに箱に戻して、そして閉めた。
「大切に使わせていただきます。」
「「じゃんじゃん使ってやってください。」」
絶対にハモらないと思っていたこの言葉がハモる。そのことに驚いて、俺たちは笑いあった。
そして会は進み、8時前になってフリータイムの終了時間になった。
「じゃあな。」
「また始業式!」
音羽とカレン、楓と奏はそれぞれまだ梅田でしたいことがあるらしく、現地で解散となる。俺たちは梅田から淀屋橋まで歩くことになった。
「ふふひはほほしほふはっはん?」
「きい、飲み込んでから喋ろうな。」
天然たい焼きを食べながら歩いているときいがなんか言ってくる。くきいは口に入れたたい焼きを飲み込んで、また喋り始めた。
「2人は今年どうやったん?」
「今年?」
「今年はいっぱい迷惑かけました。後夜祭でやらかしたり、福井行ったり。まぁ、そのお陰で今こんな感じなんやけど。」
「俺は今年は楽しめたかな?色々あったけど、結局は楽しい記憶しかないかも。きいは?」
「私は…」
きいは少し言い淀んだ。たい焼きが入った袋をぎゅっと握って、胸の前で抱える。まるで本心を隠しているかのように。
「私は色々あったけど、またこうやって2人と一緒に歩けてるし、それはハッピーエンドなんかな?2人とも、またこうやって一緒にいられるよね。」
「もちろんだ。」
「当たり前やん。」
俺たちはその事が分かりながらも、あえて何も言わずに答える。きっと、ずっとこんな距離感でいられる。この2人となら。
目の前に置いたのは1つの箱。サイズこそ小さいが、それなりのものは選んだ。
「ん?2人で1つ?」
「そそ。一緒に買いに行って、別行動やったんやけど、ちょっと高いかなって渋っていたのがこれで、ちょうど久志が来て、2人で1つ買うことになってん。」
「まぁ、ものはちゃんと悪いものではないから許してくれ。」
「いや、プレゼントに許すも何もないと思うんやけど。」
桜と顔を見合わせて、2人で箱を持つ。
「「誕生日おめでとう、きい。」」
「ありがとう、2人とも。」
きいは嬉しそうに受け取ると、「開けていい?」って目で訴えてくる。
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笑ってそう言うと、また綺麗にラッピングを剥がした。そして、箱を開ける。
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「おっ、知ってるんか?」
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きいは大事そうに箱に戻して、そして閉めた。
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「「じゃんじゃん使ってやってください。」」
絶対にハモらないと思っていたこの言葉がハモる。そのことに驚いて、俺たちは笑いあった。
そして会は進み、8時前になってフリータイムの終了時間になった。
「じゃあな。」
「また始業式!」
音羽とカレン、楓と奏はそれぞれまだ梅田でしたいことがあるらしく、現地で解散となる。俺たちは梅田から淀屋橋まで歩くことになった。
「ふふひはほほしほふはっはん?」
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「今年はいっぱい迷惑かけました。後夜祭でやらかしたり、福井行ったり。まぁ、そのお陰で今こんな感じなんやけど。」
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「私は…」
きいは少し言い淀んだ。たい焼きが入った袋をぎゅっと握って、胸の前で抱える。まるで本心を隠しているかのように。
「私は色々あったけど、またこうやって2人と一緒に歩けてるし、それはハッピーエンドなんかな?2人とも、またこうやって一緒にいられるよね。」
「もちろんだ。」
「当たり前やん。」
俺たちはその事が分かりながらも、あえて何も言わずに答える。きっと、ずっとこんな距離感でいられる。この2人となら。
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