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アケボノ

ルスツ⑰

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「お疲れ~!」
「お疲れ。」

道具を直して晩飯会場に移動。そして晩飯だ。

 自分の分の晩飯を取って、席につく。そして班が全員揃ったタイミングで食べ始めた。

「よっ。生きてたか?」
「ギリな。聡は余裕そうやけど。」
「まぁ、体力には自信あるからな。」

そう言いながら、食べている最中の俺の上に座る。そして俺は上下に振動した。

「単振動やめい。」
「やーだね。」

その瞬間、目の前に座っていた村木くんと渡辺くんが吹き出した。

「どした?」
「何か変なことあったか?」

俺たちは別に特別なことをしていた覚えはないし、そこまで変なことをしていたつもりもない。

「単振動って…」
「例え方理系しか分からんて。」

2人はあっさりとツボったみたいで、ずっと笑っている。何が面白いのかは分からないが、俺たちはそのまま動くことにした。

「おいやめろ。」
「ホンマに単振動すんな。」

2人は腹を抱えて笑っている。だから悪い俺たちは追い討ちをかけることにした。

「なんならこのまま斜方投射しよっか?」
「ちょっと垂直抗力えぐいて。」
「鉛直上向きに働く力は?」
「もうほんまにやめてくれ。」
「腹…しぬ!」

そんなこんなで笑っているうちに、うちのクラスの奴らが集まってきた。

「面白い話してそうやな。」
「なんの話してるんや?」

うちのクラスのカースト上位の奴らは、俺たちのことなんか関係なしにずいずいと話に入ってこようとする。けど、そんなのもどうでもいいほどだった。

 聡は俺の上で単振動をする。そして言った。

「単振動。」

ただその一言だけ。それだけで全て分かった思春期のガキ共は、木の柵にもたれかかったり、腹を抱えたりして笑う。

「それどっちか言うと鉛直突き上げ運動やろ。」
「そっちの方がエロいわ。」

『鉛直突き上げ運動』って何の比喩もないやないか。こっちは結構頑張って核心には触れなかったのに。

「このワンショットのタイトル『僕と君との共有結合』。」
「それサイコー!」

ついにこいつら化学も混ぜやがった。本気で女子に聞かれたらどうするんだ?いや、うちのクラスの女子には聞こえているか。もう手遅れだな。

「くれぐれも極限には近づかんように」
「もうなにも混ぜんといてや。ホンマにわからんようになるから。」

完全に理系だからこそ分かる男子高校生の話だ。でも、そんな話が面白く思えるのはきっと3日目の晩だからか。絶対そうだ。

「n回振動したとき、発散されるエネルギーはいくらでしょう?」
「だから本当にやめてくれー!」
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