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アケボノ

ルスツ⑤

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 午前中の講習が終わって昼飯の時間。俺たちはホテルのバイキングに来ていた。

「はよ食ってはよ滑ろーぜ。」
「やな。こんなとこに時間使ってられへん。」

俺たちは体が動かなくならない程度の食事を取って椅子に座る。8人席に7人で座ったから自動的に1席余るわけで、そこには暑くて脱いだスキーウェアとインナーを積み上げた。

「北海道言うてもそんな寒くないねんな。」
「いっつもこんくらい着込んでるから多かったわ。」

疲れに直接届くようにオレンジジュースを取りたかったが、あいにくなかったので断念。お茶で我慢することになった。

『いただきまーす!』

今日の昼飯はカレー。うちのテーブルは全員揃った。他のものを盛り付けるような大きな皿にご飯をどーんと盛って、そこにルーをかける。周りはテキトーにおかずを食べているが、俺たちはそんなことをせずに、ただ飲むように食べる。

「美味いな、これ。」
「スキーん時はカレーかそば系やな。やっぱ。」

隣のカレンも、結構盛っていたはずなのに、もうあと少しになっている。他のみんなもガツガツと食べてあと少し。俺もあとほんの数口だ。

「こっちのコースで良かったな。」
「それな。中級はカニ歩きからスタートしたみたいやで。」

そんな情報を持ってきたのは賀屋。めちゃくちゃ友達が多く、クラスの奴らと話していたときに名前を出したら、「なら、おもろくなるな」って言っていた。こいつ何するんだ?

「それに比べて俺らは…」
「今でリフトは5本乗ったな。」

もう食べ終わった疋田と梶本がお茶を飲みながら言う。白野は今トイレに行っている。俺も行こっかな?

「午後から向こうやったっけ。」
「そそ。イーストの手前の方で滑るみたいやで。」

午後は今滑っていたコースとは山が違う。たまたま相乗りになった一般の人に聞いてみたら、今日は向こうの方がコンディションがいいらしい。

「楽しみやなぁ。」

 皿を全部重ねて、いつでも出れるように準備する。

「トイレ行く人~!」
『はーい!』

白野が帰ってきたところで、荷物の番を任せて俺たちはトイレに行く。ボードの奴らがもう準備を進めているから、もうすぐ外に出とかないとな。

「なんとなくさ、『女子と一緒がいい』って言ってた奴らもおったやん。」
「せやな。」
「意外と男子だけの方が楽しいんちゃう?」
「そらそやろ。余計なことなんか考えんでええし。」

準備しながらイチャイチャし始めるカップルたちを見ているとそんなことを思うようになる。

「そんなこと言いつつ?」
「なぁ?」

賀屋と疋田の視線が俺に向けられた。明らかな殺意が肌で感じ取れる。

「なんやねん。」
「べーつに。」
「何もねぇよ。」

俺、今日生きて帰れるかな?
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