陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

アケボノ

カール②

「由良くんはここにして！」

ブラシを置かれたのはめちゃくちゃ右。指示としてはおそらく巻いてこいってことだろう。

　いや、無理やって。

　第一、今日初めてやってるのにそんな技術使えるわけないし。まずさ、このリンクちょっと傾いてるから曲げにくいねんな。

　って言ってもやらないといけないので、そこに目掛けて投げる。できるだけスピードは抑えて、サークルの中で止まるイメージで。

　投げた石はスーッと滑っていき、そのままサークルの外へ。曲がらない。

「おっしい！次は今ので曲げてや！」

　そして攻守交代。次は聡だ。

「御浜くんも、次は…ここ！」

船戸さんが置いたのは俺と同じようなとこ。でもさらに外側な気がする。

「右のガードストーンの裏置いて！」
「いやいや、無理やって！善処するけど。」

聡はそう叫ぶが、向こうにいる船戸さんが聞いている感じはない。ただ投げるのを待ってるだけだ。

「やらんとあかんのか…」

そう言って肩を落として投げる。ちょうどいいスピードでサークルの中に向かっていき、上手く回り込んだ。

『ナァイス！』

少し奥になってしまったが、及第点。しかも完全にガードストーンの裏に隠れているから狙いにくい。

「山下さん、次は？」
「飛ばして！」

ブラシを置いたのは聡たちのチームのサイドガード。確かにそこは邪魔だ。

　目一杯引いて、蹴り出す。実際俺はテイクアウトの方が得意だ。投げた石は一直線にガードストーンに戻っていき、当たって少し右にズレる。聡たちのチームの石はサイドガードもハウスの中に入っていたのも、2つともテイクアウト。また中は綺麗になった。

『ナイス！』

これで俺の出番はあとは擦るだけだ。

　次は聡の番。さっきのテイクアウトで俺が投げた石はその場に留まり、ガードストーンみたいになっている。だからまた回り込むようなのを投げないといけなくて…

「やっぱさっきのは奇跡か。」

聡が投げた石はサイドガードの隣を通り抜けて、ハウスの外へ。

「惜しい惜しい。ナイス！」

これで俺たちセカンドの仕事も終わり、今からはサードの仕事になる。

　今はハウスの中には一つも石がない。お互いに自分たちで作ってしまったガードストーンが邪魔してしまっている。次はガードストーンをテイクアウトしにいく感じになるかな？それとも、いや、ないか。