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アケボノ

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「なあ久志、ちょっと髪伸びてきた?」
「そうかな?あんま気にしてへんから分からんけど。」

俺は前髪を少しいじる。確かに風呂上がりとか目までかかるなとか思い始めた頃だ。ここ最近で切ったのは…2ヶ月前か。

「どうする?また切ったげようか?」
「いや、ちょっと伸ばすわ。寒いし。」
「あね。でも昔みたいにならないでよ。あれは完全に病んでる人のあれだから。」

桜は「もうこの世界なんか信じられない」と病んでる人の下手なモノマネをする。

 気づけばもう2月の頭だ。世の中学生は受験で今必死になっている頃。それは杏も一緒で、今は家で1人勉強している。俺たちがいると邪魔になると思うから、俺たちは学校近くのカフェで時間を潰して、杏に呼ばれるか、呼ばれなかったら奏たちと一緒に帰っている。

「小樽どこ回る?」
「うちの班はなにも決めてないから分からん。でも今案が出てるのはジンギスカンと海鮮系とラーメンかな?」
「全部食べ物やし。」

桜はさつまいものパウンドケーキを食べながら笑う。

「まぁうちの班も食べ物ばっかやけどね。」
「メンバーはどんな感じなん?」
「私と音羽とゆーちゃん。うちのクラスは人数が少ないから定員も少ないんやと思う。そっちは?」
「船戸さんと戸津井さんと、聡。」

最後の名前に桜の表情が固くなる。でもすぐに緩んだ。

「まぁ、御浜くんは悪くないしいいか。私たちのことも知ってるやろうし。」
「そうだな。うちの学年で俺たち以上に目立ったことしたカップルはおらんやろうな。そこそこ有名になってるみたいやし。」

それは果たして自慢なのか何なのか。おかげで桜に男が寄り付くなんてことはなくなったし、俺たちもこうやって堂々としていられるんだけどな。

「久志、小樽一緒に回らへん?」
「それってそっちの班と合同ってこと?」
「建前上は、ね?」

目的地だけ一緒にして、俺たちだけ離れたところで回ろっていう言葉が聞こえてくるような気がする。てか、いっそ抜け出したほうが…そういや、俺と桜は帰る時間が別だったわ。それは2人仲良く遅れることなんて出来るはずがない。

「まあ、みんなに確認とってからな。そっちは確認なしでもいけそうやけど。」
「たしかに、よろこんで!とかいいそう。」

誰が言うかは言及しないが、若干誰かわかってしまう。でももしそんな場合懸念要素が…いや、多分大丈夫やけど。一応ちょっと見といた方がいいかもしれないな。

「そういや私たちスノトレ買ってないよ。」
「…あっ忘れてた。」
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