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アケボノ

グータラ②

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 やがて楓も目が覚めて、俺の顔をじっと見てくる。まだ少し寝ぼけていて、状況がよく分かっていない感じだ。

 鼻をつまめば「ふごっ」と声を出して、ぱっちりと目が開いた。

「おはよ。」
「おはよ。何時に来てたん?」
「6時過ぎ。」
「早すぎ。」

やりかねないのは知ってるけど。とりあえず一緒に身体を起こして、カーテンを開ける。朝日が差し込んできて気持ちいい。

 キスをし合って数分…とはいかず30分くらい過ぎているのが常。学校がある日の朝もたまにあるので、その時はダッシュで家を出たりする。結局あの3人を待つような時間につくけど。

 一緒に歯を磨いて、朝食を軽く作る。今日の朝はトーストと目玉焼き、ハムとヨーグルト。そしてキウイだ。ちょうどいいのがあったので2人で分けることにした。飲み物は俺が紅茶で楓がキャラメルマキアート。

「粗挽き胡椒ってどこにあったっけ?」
「知らん。うちの家のキッチンは、もう楓の配置だからな。楓のほうが知ってるやろ。」
「せやな。」

キッチンに立つ楓と、テーブルで盛り付けている俺。絶対に配置は逆だが、いつもこんな感じ。俺がキッチンに立つほうが何なら珍しい。

 ゆっくりと作ったのでもう10時前だ。昼飯を食べるのは遅くなりそうだな。

「「いただきまーす!」」

いつもは向かい合わせに座っているが、今日は楓の要望で隣に座っている。しかもめちゃくちゃ近めに。

「狭ないか?」
「私、左でも食べれるから。それとも、食べさしてくれる?」

楓は妖艶な瞳で聞いてくる。今日の楓は何かがおかしい。最近、『幼馴染』しかできていなかったことの反動か?たしかに恋人っぽいことは何も出来てないけど、そんなのいつもだろ。俺も楓も殻を破れていないんだから。

 食べ終わると、いつものように俺の膝の上で寝始める。というか、まずは猫みたいにじゃれるところからスタートだが。

「にゃ!」

頬をぷにぷにしていたらそんな声を上げる。どうやらお気に召さなかったらしい。首を撫でてみると、ゴロゴロと喉を鳴らして落ち着いた。

「私たち、もう長いよね。」
「やな。」

楓と付き合い始めてかれこれ2年が過ぎようとしている。今でもあの告白は忘れられそうにない。あの日を境に俺たちは幼馴染よりも深い関係になったから、俺にとっての一生忘れない一日になった。

 どうかしたのかと目で聞いてみると、楓は抱きついてキスしてきた。

「私、もういいよ。」

楓は笑ってそう言った。俺の中の何かがプツンと切れる音がした。
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