439 / 724
ミカヅキ
おかえり
しおりを挟む
みんなと初詣をしていると、自然と心の深いところが楽になっていく気がした。
「さくちゃん。こっち来て。」
「ゆーちゃん。」
1人は少し怒ってるけど。
ゆーちゃんに近づいていくと、笑顔で私の頬をつまんできた。
「私、ちょっと怒ってるからね。」
「ごへんなはい。」
「もう私を一人ぼっちにしないって言ってくれる?」
「うん。ずっと一緒。」
「ならよし。解放してやろう。」
ゆーちゃんは最後に目一杯引っ張ってから手を離した。悪い笑顔だ。でも、昔みたいだ。
「おかえり、さくちゃん。」
「ただいま、ゆーちゃん。」
さっき言ったはずなのに、初めて言うみたいだ。
「2人とも、もうすぐ私たちだよ~!」
「今行く~」
参拝ももうすぐ私たちの番。ここは学問の神様みたいだけど、他にもお願いしたいことがいっぱいある。でも、やっぱりこれしかないな。
(みんなが楽しく過ごせますように。)
心の中でそう呟いて横にはける。隣にかかっている絵馬にはやはり『受験合格』とかそんなことがいっぱい書かれている。来年には私もここに書かないといけないな。
「おみくじ引こ~!」
「楓は年明け早々元気やな。ほら、そこの嫌そうにしている久志、行くよ。」
「えぇ~っ。分かったよ。」
嫌そうな久志の手を引っ張って、おみくじが並んでるところへ。自分で引くタイプのやつだ。
結局はいつものおみくじになるのだ。100円を投入して、手を突っ込む。全員引き終わって、横にずれた。
たしか、去年は大凶引いたんやっけ。懐かしいな。さすがに上がってるよね。
「っし!今年は吉!」
「奏もか、私も今年は吉。せっかくなら凶で揃ってくれたらおもろかったのに。」
「その残念はおかしいやろ。」
奏と楓のカップルはなんか変な理由でイチャイチャし始めてる。
「私は今年は末吉か。」
「今年も一緒ですね、熊野さん。」
2年連続同じだった音羽と杏ちゃんは今年は少しがっかりしている。内容がそこまでだったのか。
「久志は?」
「中吉。内容はそこまで。去年大凶の桜は?」
「怖くてまだ見れてない。」
恐る恐る開いてみると、そこには大吉の文字があった。その下も見ていく。でも、すぐに閉じた。
「どうした?」
「いや、何でもない。」
言えない。恋愛のところに書いてあるのが『この人となら福あり』なんて。
おみくじはポケットの中に入れて階段を下りる。
「じゃあまたね~!」
「おかえり会の予定はまた立てよ。」
「おっけー。」
みんなと別れて家に向かう。私たちの家に。慣れている道のはずなのに、どこか違うみたいだ。
「なんか久しぶりな感じする。」
「実際そうだろ。」
「やっぱさく姉がいてくれないと困るよ。」
久志たちは少し前に出て振り向く。目の前には住み慣れた家が。この壁も、このドアも、この窓も、全部数え切れないほど見てきた。
「「おかえり、桜。」」
「ただいま、久志、杏ちゃん。」
「さくちゃん。こっち来て。」
「ゆーちゃん。」
1人は少し怒ってるけど。
ゆーちゃんに近づいていくと、笑顔で私の頬をつまんできた。
「私、ちょっと怒ってるからね。」
「ごへんなはい。」
「もう私を一人ぼっちにしないって言ってくれる?」
「うん。ずっと一緒。」
「ならよし。解放してやろう。」
ゆーちゃんは最後に目一杯引っ張ってから手を離した。悪い笑顔だ。でも、昔みたいだ。
「おかえり、さくちゃん。」
「ただいま、ゆーちゃん。」
さっき言ったはずなのに、初めて言うみたいだ。
「2人とも、もうすぐ私たちだよ~!」
「今行く~」
参拝ももうすぐ私たちの番。ここは学問の神様みたいだけど、他にもお願いしたいことがいっぱいある。でも、やっぱりこれしかないな。
(みんなが楽しく過ごせますように。)
心の中でそう呟いて横にはける。隣にかかっている絵馬にはやはり『受験合格』とかそんなことがいっぱい書かれている。来年には私もここに書かないといけないな。
「おみくじ引こ~!」
「楓は年明け早々元気やな。ほら、そこの嫌そうにしている久志、行くよ。」
「えぇ~っ。分かったよ。」
嫌そうな久志の手を引っ張って、おみくじが並んでるところへ。自分で引くタイプのやつだ。
結局はいつものおみくじになるのだ。100円を投入して、手を突っ込む。全員引き終わって、横にずれた。
たしか、去年は大凶引いたんやっけ。懐かしいな。さすがに上がってるよね。
「っし!今年は吉!」
「奏もか、私も今年は吉。せっかくなら凶で揃ってくれたらおもろかったのに。」
「その残念はおかしいやろ。」
奏と楓のカップルはなんか変な理由でイチャイチャし始めてる。
「私は今年は末吉か。」
「今年も一緒ですね、熊野さん。」
2年連続同じだった音羽と杏ちゃんは今年は少しがっかりしている。内容がそこまでだったのか。
「久志は?」
「中吉。内容はそこまで。去年大凶の桜は?」
「怖くてまだ見れてない。」
恐る恐る開いてみると、そこには大吉の文字があった。その下も見ていく。でも、すぐに閉じた。
「どうした?」
「いや、何でもない。」
言えない。恋愛のところに書いてあるのが『この人となら福あり』なんて。
おみくじはポケットの中に入れて階段を下りる。
「じゃあまたね~!」
「おかえり会の予定はまた立てよ。」
「おっけー。」
みんなと別れて家に向かう。私たちの家に。慣れている道のはずなのに、どこか違うみたいだ。
「なんか久しぶりな感じする。」
「実際そうだろ。」
「やっぱさく姉がいてくれないと困るよ。」
久志たちは少し前に出て振り向く。目の前には住み慣れた家が。この壁も、このドアも、この窓も、全部数え切れないほど見てきた。
「「おかえり、桜。」」
「ただいま、久志、杏ちゃん。」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる