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ミカヅキ
歪み
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29日。私は嫌な予感がして目が覚めた。時間は9時前。昨日は遅くまで寝れなかったから少し寝すぎてしまった。
重たい足取りで洗面所まで歩いて髪をとく。お母さんはまだ寝ていて、シンと静まり返った部屋に1人でいるような感覚だ。いつも通りだけど。
何も考えたくなくて、テキトーに朝ごはんを作る。毎日やっていたことだから手際がよくなった。温かいスープを飲んで一息。窓にへばり付いている結露が朝日に照らされて星のように光る。眩しい。
昨日、あそこまで言ったから流石に今日は来ないと思う。だけど、今日帰るって言ってたから、もしかしたら最後に顔だけ…なんて私の思い上がりだ。あんなに拒絶しといてまだ会いたいとか馬鹿みたい。歪んでしまった関係は、そう簡単に取り戻すことが出来ない。さらに大きな歪みを与えないと何も変わらない。
それにしても今日はよく冷える。今年一の寒波とかニュースでは言っていた。久志、こんな中で帰るのか。風邪ひかないといいけど。
〇〇〇〇〇
今日もまた駅前の商店街を海の方に抜ける。昨日一昨日と違うところは、背中に荷物を背負っていること。流石にあそこまで拒絶されて、それでも押すほど俺は馬鹿じゃない。でも、最後に1度だけ笑った顔を見たいんだ。
「けほっけほっ。」
今日の朝からどうも風邪気味みたいだ。身体も何だか熱いし、頭がぼんやりとしている。風邪薬だけは近くの薬局で買って飲んだが、あまり効いてそうにない。
「はぁ、はぁ、あと少し。」
商店街を抜けて、海が見え始める。白くなった防波堤とその前にある道を視界に捉えた。
すっかり重くなった足をゆっくりと動かして、海沿いまで。そして右に曲がる。桜の住んでいるアパートが見えてきた。階段を登って、部屋に向かう。
そこで俺の意識は途切れた。
〇〇〇〇〇
―ドサッ
何かが落ちる…いや、倒れる音がした。嫌な感じだ。普段なら雪でも落ちたのかとそのままスルーするのに、こればかりは変な感じがする。恐る恐るドアを開けると誰かの手があった。荷物も大きい。帽子をかぶっていて、顔はよく見えない。でも何回も見てきた。
「久志!久志!しっかりして!」
そこにいたのは久志だった。
重たい足取りで洗面所まで歩いて髪をとく。お母さんはまだ寝ていて、シンと静まり返った部屋に1人でいるような感覚だ。いつも通りだけど。
何も考えたくなくて、テキトーに朝ごはんを作る。毎日やっていたことだから手際がよくなった。温かいスープを飲んで一息。窓にへばり付いている結露が朝日に照らされて星のように光る。眩しい。
昨日、あそこまで言ったから流石に今日は来ないと思う。だけど、今日帰るって言ってたから、もしかしたら最後に顔だけ…なんて私の思い上がりだ。あんなに拒絶しといてまだ会いたいとか馬鹿みたい。歪んでしまった関係は、そう簡単に取り戻すことが出来ない。さらに大きな歪みを与えないと何も変わらない。
それにしても今日はよく冷える。今年一の寒波とかニュースでは言っていた。久志、こんな中で帰るのか。風邪ひかないといいけど。
〇〇〇〇〇
今日もまた駅前の商店街を海の方に抜ける。昨日一昨日と違うところは、背中に荷物を背負っていること。流石にあそこまで拒絶されて、それでも押すほど俺は馬鹿じゃない。でも、最後に1度だけ笑った顔を見たいんだ。
「けほっけほっ。」
今日の朝からどうも風邪気味みたいだ。身体も何だか熱いし、頭がぼんやりとしている。風邪薬だけは近くの薬局で買って飲んだが、あまり効いてそうにない。
「はぁ、はぁ、あと少し。」
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すっかり重くなった足をゆっくりと動かして、海沿いまで。そして右に曲がる。桜の住んでいるアパートが見えてきた。階段を登って、部屋に向かう。
そこで俺の意識は途切れた。
〇〇〇〇〇
―ドサッ
何かが落ちる…いや、倒れる音がした。嫌な感じだ。普段なら雪でも落ちたのかとそのままスルーするのに、こればかりは変な感じがする。恐る恐るドアを開けると誰かの手があった。荷物も大きい。帽子をかぶっていて、顔はよく見えない。でも何回も見てきた。
「久志!久志!しっかりして!」
そこにいたのは久志だった。
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