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ミカヅキ
2日目
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次の日も久志はやって来た。昼前の同じような時間だ。
「帰ろう。」
「だから私に帰る権利はないって。」
どれだけ話しても、私の口調が強くなるばかりで、ただそんな私に微笑んでいる久志が目の前にいる。こんな自分が嫌いになりそう…いや、もうだいぶ前から嫌いだ。楽しそうに笑ってる私も、何かに打ち込んでいる私も、全部嫌いだ。
「何で私にそんなに気をかけるの?」
「それは…桜が俺を変えてくれたから。桜のことを家族みたいに思ってるから。やな。」
「そう。ただの居候だった私に?」
「だんだんといないと嫌になってくるみたいでさ。傷つけたくないし、気を遣いたくない。俺の理想みたいな存在だ。」
何でこんなに恥ずかしいことがポロポロと出てくるのか。不思議な話だ。
今日は28日。仕事納めの日だ。明日からはお母さんがいる。そんなに気軽に来れない筈だ。だから今日だけ乗り切れたら、久志も諦めて帰るだろう。
できればこの手は使いたくなかった。でもそうでもしないと、久志を『私』という呪縛から解放することなんてできるはずがない。今まで見てきた1年半でそんなことは分かりきっている。
「だからこれで最後。由良くん。帰って。」
泣くのはまだ早い。目に熱が籠っていくのが分かる。けど、今ここで泣いてしまったら意味がない。
目の前の久志は驚いたような表情を見せ、そして寂しそうに笑った。諦めたようにも見えた。久志のことだ。「絶対連れ戻す」とか言ってこっちに来たのだろう。そういうことを言う男なのだ。
「分かった。明日帰る。」
そう言って立ち去って行く。その後ろ姿を私は見れなかった。
家の中に戻ってベッドにダイブする。
「これでいいんだ。これでいい。うん…これで…ううっ…」
枕に顔を押し付けておかないと声が漏れてしまう。涙は滞ることなく流れ続け、声は薄暗い部屋の中に寂しく響くだけ。暖房もつけず、ただ外より少し暖かく感じるだけの部屋に独り。たまに聞こえてくる潮騒と車の音が私の心を孤独の島に連れていく。
「今までありがとう。こんな私を心配してくれてありがとう。大好きだよ。久志。」
「帰ろう。」
「だから私に帰る権利はないって。」
どれだけ話しても、私の口調が強くなるばかりで、ただそんな私に微笑んでいる久志が目の前にいる。こんな自分が嫌いになりそう…いや、もうだいぶ前から嫌いだ。楽しそうに笑ってる私も、何かに打ち込んでいる私も、全部嫌いだ。
「何で私にそんなに気をかけるの?」
「それは…桜が俺を変えてくれたから。桜のことを家族みたいに思ってるから。やな。」
「そう。ただの居候だった私に?」
「だんだんといないと嫌になってくるみたいでさ。傷つけたくないし、気を遣いたくない。俺の理想みたいな存在だ。」
何でこんなに恥ずかしいことがポロポロと出てくるのか。不思議な話だ。
今日は28日。仕事納めの日だ。明日からはお母さんがいる。そんなに気軽に来れない筈だ。だから今日だけ乗り切れたら、久志も諦めて帰るだろう。
できればこの手は使いたくなかった。でもそうでもしないと、久志を『私』という呪縛から解放することなんてできるはずがない。今まで見てきた1年半でそんなことは分かりきっている。
「だからこれで最後。由良くん。帰って。」
泣くのはまだ早い。目に熱が籠っていくのが分かる。けど、今ここで泣いてしまったら意味がない。
目の前の久志は驚いたような表情を見せ、そして寂しそうに笑った。諦めたようにも見えた。久志のことだ。「絶対連れ戻す」とか言ってこっちに来たのだろう。そういうことを言う男なのだ。
「分かった。明日帰る。」
そう言って立ち去って行く。その後ろ姿を私は見れなかった。
家の中に戻ってベッドにダイブする。
「これでいいんだ。これでいい。うん…これで…ううっ…」
枕に顔を押し付けておかないと声が漏れてしまう。涙は滞ることなく流れ続け、声は薄暗い部屋の中に寂しく響くだけ。暖房もつけず、ただ外より少し暖かく感じるだけの部屋に独り。たまに聞こえてくる潮騒と車の音が私の心を孤独の島に連れていく。
「今までありがとう。こんな私を心配してくれてありがとう。大好きだよ。久志。」
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