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ミカヅキ
会いたい
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クリパの2日後の12月26日。俺は少し大きめの荷物を持って家を出ようとしていた。行く場所は福井県。桜を見つけるまで何日かかるか分からないから金は少し多めに持っておく。
杏は朝早く、きいの家に向かった。俺が帰ってくるまでの少しの間、面倒を見てもらうことにしたのだ。年末年始を家族と過ごせないってのは少し寂しいが、もう1人の家族を連れ戻すためだから。そうしたら3人でまったり過ごそう。
「じゃ、行ってきます。」
誰もいない家にそう告げて家を出る。寒い空がこの先の厳しさを物語っているようだ。マフラーを巻いて手袋をして、寒さをしのぐ。
いつも通っているはずの駅までの道が少し遠く感じる。それでも嫌な気はしない。始まる長旅のまだほんの一部なんだから。
途中のコンビニには奏がいた。
「行くのか?」
「あぁ。ちゃんとしてくるから待っとけよ。」
「お前が重たかったらちょっと引くけど、そんなことはないんだろうな。」
「ねぇよ。俺は人との付き合いを大切にしたい派だ。」
奏は去年からあのことを知っている。でも冷やかしたりは絶対にしない。そういうやつってことは知ってたが。
「新年にはおかえり会でもしよう。」
「だな。その方が桜も喜ぶだろ。」
奏は俺の手のひらに持っていた豚まんを乗せる。
「どうした?」
「俺からのほんの少しのエールだ。」
奏はそう言って笑う。商売的な笑顔ではなくていつもの笑顔。やっぱりこいつはいい男だ。
「てんきゅ。」
「おう、頑張ってこい!」
奏は俺の肩を叩いて道を渡っていく。
駅まではあと少し。踏切の音が聞こえるようになり、次第に電車の通過する音も。イヤホンを耳に入れ、mp3プレイヤーのアプリを開く。昨日作ったプレイリスト。桜と作った曲だけのプレイリストだ。この曲が1番落ち着くし、気合いが入る。
駅のホームから電車に移る。これでしばらく枚方とはお別れだ。次に帰ってくるときは2人になってるといいとそう思った。
杏は朝早く、きいの家に向かった。俺が帰ってくるまでの少しの間、面倒を見てもらうことにしたのだ。年末年始を家族と過ごせないってのは少し寂しいが、もう1人の家族を連れ戻すためだから。そうしたら3人でまったり過ごそう。
「じゃ、行ってきます。」
誰もいない家にそう告げて家を出る。寒い空がこの先の厳しさを物語っているようだ。マフラーを巻いて手袋をして、寒さをしのぐ。
いつも通っているはずの駅までの道が少し遠く感じる。それでも嫌な気はしない。始まる長旅のまだほんの一部なんだから。
途中のコンビニには奏がいた。
「行くのか?」
「あぁ。ちゃんとしてくるから待っとけよ。」
「お前が重たかったらちょっと引くけど、そんなことはないんだろうな。」
「ねぇよ。俺は人との付き合いを大切にしたい派だ。」
奏は去年からあのことを知っている。でも冷やかしたりは絶対にしない。そういうやつってことは知ってたが。
「新年にはおかえり会でもしよう。」
「だな。その方が桜も喜ぶだろ。」
奏は俺の手のひらに持っていた豚まんを乗せる。
「どうした?」
「俺からのほんの少しのエールだ。」
奏はそう言って笑う。商売的な笑顔ではなくていつもの笑顔。やっぱりこいつはいい男だ。
「てんきゅ。」
「おう、頑張ってこい!」
奏は俺の肩を叩いて道を渡っていく。
駅まではあと少し。踏切の音が聞こえるようになり、次第に電車の通過する音も。イヤホンを耳に入れ、mp3プレイヤーのアプリを開く。昨日作ったプレイリスト。桜と作った曲だけのプレイリストだ。この曲が1番落ち着くし、気合いが入る。
駅のホームから電車に移る。これでしばらく枚方とはお別れだ。次に帰ってくるときは2人になってるといいとそう思った。
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