陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ミカヅキ

シネラリア③

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 2人は俺が指さした曲を見る。先に2番を読み始めた船戸さんが視線をノート上部に戻した。そしてまた2番へ。何かに気づいたようだ。

「この曲だけ字が2人分。」
「えっ?ほんとだ!なんで??」
「この曲の1番は俺が書いて2番は桜が書いてん。」

 この曲が生まれたのは桜が俺の家に住み始めて初めての夜。杏がさっさと寝てしまって、仕方なく俺と背中合わせで寝た晩だ。寝れなかった俺はこの曲の1番だけを書いて、納得がいかなくてそのまま捨てた。けど、そのすぐ後に起きた桜が2番を書いてそしてあと少しのところまで来て、そのままだ。

「俺はこの詩を書き上げる。桜が帰ってくるまでに。だから曲にしてくれ。」
「でもいい曲になっちゃったら、有田さんは『私なんて必要ない』って思うんちゃう?」
「『私のほうがいい曲書ける』って思わしたらいいんちゃうん?」
「「は?」」

普通はこんなオーダーはしないだろう。いい曲が欲しいから悪い曲を書いてくれ、なんて。

「無理と分かって頼む。足りない曲を書いてくれ。この曲に関してはそうして欲しい。」

俺は2人に頭を下げた。一表現者としてはありえないことを言っている。こんなこと言って自分のことを『表現者』とか言うのはどうかと思うけど、俺の硬い頭ではこれくらいのことしか思いつかなかったのだ。

「はぁ、分かった。でも、まだ書けてないんやろ?書けたら言って。」

船戸さんは呆れたように言う。戸津井さんはやれやれとした表情で俺の事を見ていた。

「ありがとう。」
「いや、いいって。チームなんやもん。」

その響きがくすぐったい。
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