陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

ミカヅキ

シネラリア①

　あれから随分と日が経った。でもまだキャンバスは真っ白なまま…ではない。自分が書こうとしているものの輪郭ははっきりと見えている。だからこそあとは、書くだけなんだ。なのに、ペンを持つと全てを忘れたように分からなくなる。

　今まで桜と作った曲の歌詞を見返してみる。

　初めは俺たちは何も知らないただの対極の存在だった。でもあの日仕方なく寝てから、俺たちの関係は変わったのかもしれない。あの時の歌詞を桜が見て、そして続きを書いて、そして繋がった。桜と出会って変わった人生のそのハジマリはここだったのだ。この1ページで近づいて、知りたくなってしまった。

　それからも『初恋』だとか、『モブの魔法』だとか。色々書いたけど、やっぱり1番はあれだな。『未確定未来』。あれが俺的には一番好きな曲だ。その善し悪しは知らないけど、1番楽しかった。

　桜の曲が好きなのも、俺がこんなに書けた理由でもある。桜の曲はいつも違った表情を見せるけど、その奥底にあるのは澄んだオレンジ色の優しさ。そこだけは全く揺るがない。そういう所が俺を虜にしたんだと思う。

　しかも、どんなめちゃくちゃな曲を要求しても全てを音にしてくれる。『Perfect Man』がいい例だ。あのときは滅多に書かない曲を書いてしまった。桜には悪いことをしたと思う。けど、これも音にしてくれると思っていた。いや、依存していたのかもな。桜がいてくれるだけでって勝手に決めつけて。

　だからこうやって思い浮かばないのかもしれない。たった1人、されど1人。桜がいなくなるだけでこんなに弱く。それほどに桜に甘えていたのかも。

　そんな後悔をしたって、現実は変わってくれない。やっと分かった。こうやって大人になっていくんだって。

　俺はペンを持った。空に絵を描こうとしているみたいだ。でもいい。俺は俺を認める。俺は弱い。自分が思っている以上に、俺は弱い。