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ミカヅキ
Film④
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私は柚ちゃんの書いた歌詞を目の前にして頭を抱えていた。
「こんな気持ち、私には分からないよ。」
遠くに行ってしまった幼馴染との思い出ってことは分かってる。それくらいは読み取れる。けど、気持ちは分からない。それがどんなに痛くて、どんなに辛くて、どんなに寂しいのか。
今日はカレンには申し訳ないが、自分の家で食べるように言っている。この歌詞を貰った時から難しいと分かっていたからだ。けど、こんなに難しいなんて…
「やっぱりカレン呼ぼっかな。」
普段騒がしい部屋がいきなり静かになると不安になってくる。そのことに寂しさを感じて…
「こんな寂しさ…やないよね。」
すぐ会えると知っている寂しさではない。もう会えないかもしれないという寂しさ。ここに来るまでに、向こうでの幼馴染とはしっかり別れて踏ん切りをつけてきた、そんな寂しさを知らないのだ。
何回も聴いた柚ちゃんのデモ。伴奏もコード進行も何も無くて、ただ机を叩いている後ろにあるのは寂しそうなメロディー。
そうか。そういう事か。分からないから感じ取れたらいいんだ。分からないなりのメロディーが出来上がれば、それでその寂しさが分かればいいんだ。
スマホの中に入っている作曲アプリを起動させて音を入れていく。もう迷いはない。ただ、心のゆくままに書いていくだけだ。
もう外は暗くなった。窓の外から差し込んでいた赤い光も今はない。ただ暗闇が広がっている。
「これでよし。あとは聴かせてOKが出たらそれでいい。」
柚ちゃんの連絡先をタップして、添付ファイルを…ってとこで私の指が止まった。
「やっぱりいいや。顔見たいし。」
スマホを閉じて、隣の部屋に行く。外はもう冬だ。風は冷たくて、こんな薄着で出たのを後悔するくらい。でも、それ以上に楽しみだ。
「カレン、おる?」
インターホンを押して、そうやって声をかける。すぐにドアが開いた。
「ご飯、食べた?」
「まだやけど、音羽ちゃんは?」
「まだ。さっきまで作業してたから。」
「知ってる。鼻歌聞こえとったで。」
「恥ずかし!まぁいいや。一緒に食べよ。」
ああいう歌詞を書いていたからか、今は孤独が本当に寂しく感じてしまう。だから、こうやって会いたくなるのだろう。
カレン1人が私の隣にいてくれるだけで心が落ち着く。随分単純な女になったなと思うけど、仕方ない。だってこの心はこいつに絆されてしまったのだから。
「どした?音羽ちゃん。」
でもちゅるちゅると麺をすする隣のこいつはこのことを知らない。
「んーん、何でも。」
だけど、もう少しこのままでいたいな。
「こんな気持ち、私には分からないよ。」
遠くに行ってしまった幼馴染との思い出ってことは分かってる。それくらいは読み取れる。けど、気持ちは分からない。それがどんなに痛くて、どんなに辛くて、どんなに寂しいのか。
今日はカレンには申し訳ないが、自分の家で食べるように言っている。この歌詞を貰った時から難しいと分かっていたからだ。けど、こんなに難しいなんて…
「やっぱりカレン呼ぼっかな。」
普段騒がしい部屋がいきなり静かになると不安になってくる。そのことに寂しさを感じて…
「こんな寂しさ…やないよね。」
すぐ会えると知っている寂しさではない。もう会えないかもしれないという寂しさ。ここに来るまでに、向こうでの幼馴染とはしっかり別れて踏ん切りをつけてきた、そんな寂しさを知らないのだ。
何回も聴いた柚ちゃんのデモ。伴奏もコード進行も何も無くて、ただ机を叩いている後ろにあるのは寂しそうなメロディー。
そうか。そういう事か。分からないから感じ取れたらいいんだ。分からないなりのメロディーが出来上がれば、それでその寂しさが分かればいいんだ。
スマホの中に入っている作曲アプリを起動させて音を入れていく。もう迷いはない。ただ、心のゆくままに書いていくだけだ。
もう外は暗くなった。窓の外から差し込んでいた赤い光も今はない。ただ暗闇が広がっている。
「これでよし。あとは聴かせてOKが出たらそれでいい。」
柚ちゃんの連絡先をタップして、添付ファイルを…ってとこで私の指が止まった。
「やっぱりいいや。顔見たいし。」
スマホを閉じて、隣の部屋に行く。外はもう冬だ。風は冷たくて、こんな薄着で出たのを後悔するくらい。でも、それ以上に楽しみだ。
「カレン、おる?」
インターホンを押して、そうやって声をかける。すぐにドアが開いた。
「ご飯、食べた?」
「まだやけど、音羽ちゃんは?」
「まだ。さっきまで作業してたから。」
「知ってる。鼻歌聞こえとったで。」
「恥ずかし!まぁいいや。一緒に食べよ。」
ああいう歌詞を書いていたからか、今は孤独が本当に寂しく感じてしまう。だから、こうやって会いたくなるのだろう。
カレン1人が私の隣にいてくれるだけで心が落ち着く。随分単純な女になったなと思うけど、仕方ない。だってこの心はこいつに絆されてしまったのだから。
「どした?音羽ちゃん。」
でもちゅるちゅると麺をすする隣のこいつはこのことを知らない。
「んーん、何でも。」
だけど、もう少しこのままでいたいな。
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