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ミカヅキ

Film②

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 次の日、私は1枚の紙を取り出した。びっしりと書かれた歌詞。こんなに書くのはいつ以来だろうか。しかも、めちゃくちゃ恥ずかしい。自分の作った歌詞を見られるのって、なんでこんなに恥ずかしいのだろう。

「音羽。歌詞書けたから見て。」
「もう出来たん?」

音羽がそうやって驚くのも無理はない。私はあの中では1番文才がないし、音楽の知識もない。でも…

「思い出したから。作詞家くんが言ってくれたこと。」

何も言うことがなくて、無理して言ったのかもしれたい。けれど、確かに心の中に残っている。『桜のために書く』。それだけを考えたらパズルのピースがピッタリとハマったように、まるでそのことが自然のように書くことができるようになった。

「あの時のことか。懐かしいな。」

音羽は感慨深そうにしている。あの頃の作詞家くんは今みたいな生き生きとした感じではなくて、本当に陰キャだった。

「なら安心か。見せて。」

音羽は開いていた数学の問題集を閉じて、顔を上げた。私は手に持っている紙を渡す。

 私は今の桜よりも昔の桜のことを思い出して書いた。しかも視点は私から。単調なリズムをベースにしているが、ちゃんと曲になっていると思う。

「この曲書くときに作ったリズムも送っとくね。」
「ありがと。私は個人的にこういう曲の方が作りやすいから、本当にありがたい。」

音羽は笑って紙を見せてくる。私の書いた軌跡が伝わったような気がした。

「じゃあ、出来る限り上手くするから。」
「頼みます!」
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