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ミカヅキ

Film①

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 私は、桜の幼馴染。桜のことなら1番知っているし、桜と過ごした時間は誰よりも濃くて誰よりも長い。そう信じている。

 そんな私でもこればかりは本当に分からない。何でまた桜はいなくなったんだろう。逃げたとは思いたくない。でもその可能性もあるのは確かだ。だって私もそうだったから。

 「今どこにいる?」なんて言えるはずもない。桜がそういう選択をしたということは、そこにはアテがあるということ。おそらく桜のお母さんとか。ならどこかのタイミングで連絡があったのかも。作詞家くんがそれを知っている…訳ないよね。だってあの作詞家くんやもん。鈍いの最上級みたいな存在やもん。

「元気にしてるよね。」

今はただそう願うだけ。

 それはそうとして、あの課題だ。私も私なりの桜への思いを書こうと思うけど、なんせその経験がちょっとしかないから、一向に書けない。こういうとき、どうするって言ってたっけ?

『「まず、こんな感じで机を叩いてみる。」』

作詞家くんは右手の人差し指と中指をテキトーにバラバラに動かして、パターンを作っていた。

『「今叩いた音は基礎になる。この音を頭で再生しながら、鼻歌を歌ってみる。」』

『「最初は韻とか考えんくていい。俺も今パッと考えたヤツだから上手くないけど、なんとなくでもこんな感じで形になんねん。」』

『「ん~そうやな。好きな人のこと考えるとか。」』

絶対我流って分かってるけど、けど納得の作り方だ。

「やるしかないか。」

私は1つ大きく息を吐いて、桜のことを考える。そして、机を叩いた。これでもない、これでもないと試行錯誤の末、やっと納得のいくリズムが出来上がる。

 次の作業は…そうだ。鼻歌だ。

 私はさっきのリズムを叩きながら鼻歌を歌う。これは思ったよりも簡単に出来上がる。

「ん~ん~んんん~♪んんん~ん~んんん~♪」

これに合うような歌詞を考えるのか。ならあれしかないな。

 私はペンを手に取った。
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