391 / 724
ミカヅキ
照らして①
しおりを挟む
「楓、俺はできたぞ。」
「分かった。後で見せて。」
今日も今日とてクラブ帰り。楓と2人で夜道を歩く。ちょうどラッシュの時間と被っていたので、周りにはサラリーマン。そうは言えどもちらほらいるって感じだ。
そして家に着いて、楓と一緒に俺の家に入る。毎日のように繰り返している流れなので、楓の母さんも了解してくれている。まぁ、クラブで疲れている身体にムチを打ってまで、晩御飯を作りたくはないからありがたいけど。もう少し危機感を持って欲しいものだ。
「で、歌詞は?」
「せやった。これこれ。」
俺はスマホを開いて、歌詞の書いてあるメモを見せる。
「なるほど…へぇ。でも分からんわ。」
「なにが?」
「一人称を『私』にした理由。」
「あぁ、それな。いつも『俺』とか『僕』とかやもんな。」
「奏の『僕』呼びキモ」
楓はいかにも自然な振る舞いのようにそう言う。
「うっせ。あれはな、そういう担当はQで十分やなって。何となく。」
「分からんけど分かるわ。そっちの方が桜も…やし。」
「あれは気付かないQが悪い。」
「それな。」
ここにいないQには悪いが、それくらいのことを実際にしているんやし。あんな見え見えやのに逆に不思議なくらい。
「で、こんな曲になったと。」
「そういうこと。助かる。」
「まあとりあえずこれで書いてみるけどさ、もし合わんくなったら勝手に歌詞変えるけど、別にいいよね?」
「もちろん、楓に都合のいいようにしてくれ。それでちゃんといい歌になるんやったら。」
「分かった。はい、できたよ。焼くだけやったけど。」
楓が机の上に出したのは、山盛りの鶏肉。味付けはご飯に合うタンドリー風。某格安スーパーで買ったやつだが、こういう練習後にはありがたい一品だ。
「いつもありがとな。」
「別に変なことはしてないし。やりたくてやってることやから。」
そんなことを言いながら、お茶碗にご飯をついでくれる。こんな感じの生活になる前、楓がまだ泳いでいた頃は、俺の食生活はぐっちゃぐちゃで、手もつけられない程だった。けど、楓がやってくれるようになってから、人間らしくなったと思う。人1人が側にいるだけで、こんなに違うなんて。
「楓、ラスサビだけ変えさしてくれ。」
「別にいいけど。」
楓に渡していたスマホを受け取って、歌詞を手直しする。
「なるほど。うん。その方がいい。」
横から覗いていた楓は、そう言葉を漏らした。
「分かった。後で見せて。」
今日も今日とてクラブ帰り。楓と2人で夜道を歩く。ちょうどラッシュの時間と被っていたので、周りにはサラリーマン。そうは言えどもちらほらいるって感じだ。
そして家に着いて、楓と一緒に俺の家に入る。毎日のように繰り返している流れなので、楓の母さんも了解してくれている。まぁ、クラブで疲れている身体にムチを打ってまで、晩御飯を作りたくはないからありがたいけど。もう少し危機感を持って欲しいものだ。
「で、歌詞は?」
「せやった。これこれ。」
俺はスマホを開いて、歌詞の書いてあるメモを見せる。
「なるほど…へぇ。でも分からんわ。」
「なにが?」
「一人称を『私』にした理由。」
「あぁ、それな。いつも『俺』とか『僕』とかやもんな。」
「奏の『僕』呼びキモ」
楓はいかにも自然な振る舞いのようにそう言う。
「うっせ。あれはな、そういう担当はQで十分やなって。何となく。」
「分からんけど分かるわ。そっちの方が桜も…やし。」
「あれは気付かないQが悪い。」
「それな。」
ここにいないQには悪いが、それくらいのことを実際にしているんやし。あんな見え見えやのに逆に不思議なくらい。
「で、こんな曲になったと。」
「そういうこと。助かる。」
「まあとりあえずこれで書いてみるけどさ、もし合わんくなったら勝手に歌詞変えるけど、別にいいよね?」
「もちろん、楓に都合のいいようにしてくれ。それでちゃんといい歌になるんやったら。」
「分かった。はい、できたよ。焼くだけやったけど。」
楓が机の上に出したのは、山盛りの鶏肉。味付けはご飯に合うタンドリー風。某格安スーパーで買ったやつだが、こういう練習後にはありがたい一品だ。
「いつもありがとな。」
「別に変なことはしてないし。やりたくてやってることやから。」
そんなことを言いながら、お茶碗にご飯をついでくれる。こんな感じの生活になる前、楓がまだ泳いでいた頃は、俺の食生活はぐっちゃぐちゃで、手もつけられない程だった。けど、楓がやってくれるようになってから、人間らしくなったと思う。人1人が側にいるだけで、こんなに違うなんて。
「楓、ラスサビだけ変えさしてくれ。」
「別にいいけど。」
楓に渡していたスマホを受け取って、歌詞を手直しする。
「なるほど。うん。その方がいい。」
横から覗いていた楓は、そう言葉を漏らした。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる