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ミカヅキ

音を紡げば⑬

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 どこか知らない世界に来たような気分だ。

 桜は普通の女の子だった。ただ、私が勝手に理想を重ね合わせて、そういう人なんだと勘違いしていた。いや、思い込んでいた。そう信じたかったのかもしれない。

「はぁ~、またやっちゃってる。」

私の悪い癖だ。小学生の頃から何も変わっちゃいない。あの頃はひい君に理想を重ね合わせて、迷惑ばっかかけてきた。ひい君は「迷惑じゃない」って言ってくれたけど、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 だから、これからは『ホンモノ』の関係であろうと思ったのだ。理想を重ね合わせたり、依存したりしない。そんな関係を目指そうと思ったのだ。でも、人との関わり方が下手くそな私は、自然と理想を重ね合わせてしまっていた。

 それは、楓にも音羽にも。加太くんや新宮くんのことはまだよく知らないから大丈夫だと思うけど。もっと知ってしまったらそうなるかもしれない。

 そうやって知ってしまうことで迷惑になるのだと思って、私は陰に隠れるようになったのだ。私が陰にいることで迷惑にならない人がいるなら、私の気持ちを押し殺そうと思ったのだ。

 それでも知りたいと思ってしまうのが、それでお互いを分かり合えたなら、それはきっと『ニセモノ』ではなく、『ホンモノ』と言えるのだろう。上辺だけの関係じゃまとまらない、たった一言では表せない。そんな関係なんだろう。私たちはまだそんな関係からは程遠い。全く別の島の住人だ。

「ご飯できたよ~!」
「はーい!」

学校から帰ってきて、着替えながらそんなことを考えていたら、ぼーっとしていたみたいだ。かれこれ1時間くらい経っている。脱ぎ散らかしたまんまの制服をハンガーにかけたり、まとめて洗濯に出したりして、リビングへ。

 ママは笑顔で待っていた。

「学校でなんかあった?」
「ん?別に。」
「ならママの思い過ごしかな?最近、学校の話あんまされないなぁって。」
「たしかに。」

思い返してみると、桜がいなくなってからずっと自分で考えてばっかだ。1人で完結させようとしている。でも、抱えきれないほどのものではない。

「どうしても苦しくなったら話すね。」
「やったらママの出番は無さそうね。」

どうしてそんな言葉が出てきたのかは分からない。けど、自然と零れていた。
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