陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ミカヅキ

音を紡げば⑪

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 俺は全て話した。昔の桜のこと、今の桜のこと、桜がいなくなってからのこと。全部を話した。

「桜さんにそんなことが…。何も気づけなかった。」
「桜も桜で上手く隠していたからな。俺も教えてもらうまでは知らなかったし。」

もう冷めてしまった餃子を固くなりそうなご飯と一緒に口の中に放り込む。この食べ方はやはり冷めても美味い。


「んで、どうにかして戻ってきて欲しいと。」 
「そゆこと。」

杏も同じように餃子を食べ進める。

「桜さんを戻ってくるようにして、何がしたいん?」
「なんだろうな。」

最近は自分の考えもまとまらない日々が続いている。授業にも集中出来ないし、こうやって歌詞も書けない。

 1人で悲観的になっている俺の目の前で、杏はため息をついて言う。

「バカ兄がさ、どうしようもなく面倒くさいのも、ヘタレなのも、周知の事実なんやから。やけど、ちゃんと言葉にしてくれへんと分からんよ。」
「なんか俺の事めちゃくちゃ言ってるけど、杏もか?」
「私は不服ながらバカ兄マイスター取得済みで、バカ兄思考検定1級持ってるからね。長い付き合いやから。」

杏は最後の1個の餃子を食べて、「ごちそうさまでした。」と手を合わせた。

「バカ兄は今まで友達少なかったから知らへんかもしれんけど、言葉にしないと伝わるものも伝わらないよ。相手がどんなに親しかったとしても全部は分からない。今、私がバカ兄のこと全部は分からないみたいにね。」

と、いいこと言ったでしょみたいな顔。普段はムカつくその顔も、今の俺にとっては救いだ。

 なんか知らん間に杏は自分の部屋に戻っていたので、皿とかは俺が片付けることに。こういう何も考えないでいい時間が俺の…

 インスピレーションというのはこういうときに浮かんでくるものだ。やはり。
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