陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

ミカヅキ

音を紡げば⑦

「最近、有田さん見ないけどなんかあった？」

朝、教室に入るとすぐに私はそう声をかけられた。

「分からない。」

私はそうとしか言えない。

　桜に何があったのか、私は何も知らない。ただ、無の感情だけがそこにある感じだ。

　心配もしていない。怒ってもいない。悲しんでもいない。人はそんな簡単には死なないし、桜なら何とかして抗う。そんな女の子だと、密かに憧れていた。

　だから自分を負けヒロインだと認めたんだ。

　ひい君が言っていた音楽の課題。私も私なりに桜に言いたいことがたくさんある。なんなら今書いてしまっても、いや、それは無理か。たぶん言いたいことを殴り書きしたような歌が出来上がってしまう。そんなのじゃ伝わらない。

　なんて、1曲出来上がるほど上手く伝えられないんやけどね。上手く伝わらないからこそ伝えたいのかな？どうなんだろ？なにも分からないや。

　なんて考えてたら1日なんてすぐに終わる。最近よくあることだ。不思議には思わない。前からたまにそんな日があったから。みんなと遊びに行った日とかはそう。ひい君と遊びに行った日も…そういえば最近は毎日が短く感じてたな。歳のせいかなとか女子高校生っぽくないこと考えてたけど、やっと分かった。

　この生活が楽しいんだ。それと同じくらいに感じる最近は楽しいんだ。

　ってことはそれくらいに桜のことが大切？

　えっ？

　え？

　………

　よし、少し落ち着こう。

　桜は私にとって？そんなの決まってる。恋敵だ。蹴落としたいとかそんなこと、微塵も思ってもいないが、正々堂々戦ってそれで負けるのなら本望だ。出来れば勝ちたいけど。

　そして、憧れの存在。あんな風に強くなりたい。私はずっと弱くてひい君の後ろに隠れてたから。あんな感じで人の前に立って色々言いたい。

　やっぱり私にとって大切な存在になりつつあるんだ。