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ミカヅキ
音を紡げば⑥
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練習後、俺と楓はいつものように帰路についていた。
「Qからあの話聞いたか?」
「音楽の課題のこと?」
「そそ。また1曲作らなあかんってこと。」
「しかもテーマが…」
俺たちはその後の言葉を言わなかった。言えなかった。
「なんか、私たちのためだけの課題みたいやね。」
楓ははぐらかすようにそう言う。俺はさっき買ったホットココアで身体を暖めて、坂を登り始めた。
「ちょーだい。」
「ん?ん。」
楓が横から手を出してきたので餌付けするように飲ませる。
本当なら俺から言うべきなのだろうか。もう届いてしまっている相手が目の前にいる以上、届きそうで届かない相手なんて1人しか居ない。俺には。いや、俺たちには。
「ねぇ、今度は2人で書こうよ。桜に。そのつもりやったやろ?」
「まぁそのつもりやったけど、2人で。」
結局いつも俺からは決められないまま。楓が俺のしたいことを言ってくれて初めて形になる。結局俺は楓の言葉なしでは何もできないのか。いや、ただ俺が弱いだけだ。こんなんじゃ、俺は楓を支えられるわけがない。
はぁ~と息を吐きながら坂の頂上近くのコンビニ前までたどり着く。11月の頭ながら、顔を刺すような寒さが冷えたからだを痛めつける。
よくよく考えたら俺は今の桜しか知らない。小倉さんが幼馴染だったってことも聞いたこともなかったし、富田さんとそういう諍いがあったってことも聞いたこともなかった。桜は昔からあんな感じだったのかも分からない。というか、桜ってどんな感じなんだろう?
そして気づいた。
結局俺は何も知らないのだと。
気づいた時にはもう口が動いていた。
「なあ、楓。俺、桜のことあんま知らねぇわ。」
「うん。私も。結局分からないままだったから。」
悲しそうに笑う楓。友達だから、いや、友達だからこそ本当のことは何も知らなくて、何も見せたくないのだろう。結局は繕った仮面だけを見せて、全てを晒した気になってしまっている。
「なぁ楓。」
「うん、奏。」
「知りたいな。」
「うん、ちゃんと知ってちゃんとしたい。」
「Qからあの話聞いたか?」
「音楽の課題のこと?」
「そそ。また1曲作らなあかんってこと。」
「しかもテーマが…」
俺たちはその後の言葉を言わなかった。言えなかった。
「なんか、私たちのためだけの課題みたいやね。」
楓ははぐらかすようにそう言う。俺はさっき買ったホットココアで身体を暖めて、坂を登り始めた。
「ちょーだい。」
「ん?ん。」
楓が横から手を出してきたので餌付けするように飲ませる。
本当なら俺から言うべきなのだろうか。もう届いてしまっている相手が目の前にいる以上、届きそうで届かない相手なんて1人しか居ない。俺には。いや、俺たちには。
「ねぇ、今度は2人で書こうよ。桜に。そのつもりやったやろ?」
「まぁそのつもりやったけど、2人で。」
結局いつも俺からは決められないまま。楓が俺のしたいことを言ってくれて初めて形になる。結局俺は楓の言葉なしでは何もできないのか。いや、ただ俺が弱いだけだ。こんなんじゃ、俺は楓を支えられるわけがない。
はぁ~と息を吐きながら坂の頂上近くのコンビニ前までたどり着く。11月の頭ながら、顔を刺すような寒さが冷えたからだを痛めつける。
よくよく考えたら俺は今の桜しか知らない。小倉さんが幼馴染だったってことも聞いたこともなかったし、富田さんとそういう諍いがあったってことも聞いたこともなかった。桜は昔からあんな感じだったのかも分からない。というか、桜ってどんな感じなんだろう?
そして気づいた。
結局俺は何も知らないのだと。
気づいた時にはもう口が動いていた。
「なあ、楓。俺、桜のことあんま知らねぇわ。」
「うん。私も。結局分からないままだったから。」
悲しそうに笑う楓。友達だから、いや、友達だからこそ本当のことは何も知らなくて、何も見せたくないのだろう。結局は繕った仮面だけを見せて、全てを晒した気になってしまっている。
「なぁ楓。」
「うん、奏。」
「知りたいな。」
「うん、ちゃんと知ってちゃんとしたい。」
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