陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

ミカヅキ

朝

　朝起きて窓を開ける。狭いアパートの一室にはお母さんと私の布団が広がっている。この1年半で身体に染み付いた生活リズムはここに来てからも抜けないままだ。

　時間は6時過ぎ。体はもうすっかり起きて、目もパッチリだ。窓から眺める港と海はもう動いていて、朝日に照らされて輝いていた。ふぅ～と息を漏らせば白く濁って、どこかにとんでった。

「桜、もうちょっと寝てええねんで。」
「んーん、もう起きちゃったから。」

寒くないスウェットに着替えて、靴を履く。ここに来てからずっとだ。朝起きるとじっとしていれなくて、散歩に行くようにしている。ルートは日によって違うが、たどり着くところは毎日変わらない。

　商店街を抜けると小浜駅が見えてくる。大学に通う学生たちと働くために市街地に向かうサラリーマンが入れ違いになっているのを見て、私も改札の方に行きたくなる。そして足を止めた。目を背けるようにして、元来た道を歩く。

　次第に海が見えてきて、住んでいるアパートに戻ってきた。

「また行ってきたん？」
「うん。」

ちょうどごみ捨てに出てきたお母さんにそう聞かれる。

「戻りたきゃ戻ってええねんで。」
「さすがにそれはキツいな。」

あんなことをして、のうのうとまたあの学校に戻れそうにない。こんな私が戻ってもいいのかって気持ちもある。あの6人なら私のことを笑顔で迎えてくれるはずだけれど。それでも私には無理だ。

　台所に立って朝ごはんの用意をする。今日の朝はベーコンエッグ。最近は毎朝そんな感じだ。

　冷蔵庫から卵とベーコンを取り出す。フライパンに油をしいて、ベーコンを並べる。4枚。そして卵を割ろうとして、気づいた。出した卵は5つ。いつもの朝に作っていた卵焼きと同じ数だ。

「ははっ」

せっかく振り切れそうだったのに、なんでこうなるのかなぁ。