陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

バイバイ

後の祭り②

　そんな話をしていたら、特設ステージに明かりが灯る。そこにいるのは。

「桜、ホンマに選ばれたんや。」
「アイツが嘘はつかねぇだろ。」

遠くから眺めても分かる、圧倒的なオーラ。ずっと一緒にいたから忘れていたが、クラスのマドンナだった女子なのだ。

「KOKUGAKU FES.後夜祭！スタートだ！」
『うおぉぉぉ!!!!!』

桜のその掛け声にグラウンド中が地鳴りのような歓声を上げる。

「さぁて、過去最高に盛り上がったKOKUGAKU FES.も今日で終わり！これからはまたあの地獄に戻るけど、今日この場所だけは自由に騒ごうじゃねぇか！ってことで飲んで食って歌って叫んで今までの鬱憤を晴らしてこう！」
『うおぉぉぉ!!!!!』

桜はしっかりと仕事をこなす。観客たちに向けた煽り文句もしっかりレスポンスが返ってきて嬉しそうだ。

「まずはオープニングアクト！文化祭で校舎前を盛り上げてくれた3年生バンド…」

　後夜祭はライブから始まった。桜がステージ横に行くと同時に重低音が鳴り響く。

「前すごいことなってるな。」
「まぁ、当日来れなくて見てない人もいるからね。」

俺が呟くと、隣にいたきいがそうやって言う。

「あれ？奏たちは？」
「はぁ…前。当日来れなかったから。」
「あぁ、何か大会って言ってたな。」
「ひい君も行く？」
「死んでもごめんだ。」

きいが持ってるベビーカステラを食べながら前方で行われているバカ騒ぎを見る。こりゃあ、来年は無さそうだ。はっきり言って近所迷惑極まりない。苦情がどれだけ入るかだな。

「来年はひい君がここに立ったら？」

きいは俺の持っているたこ焼きを1つ口の中に放り入れて、はふはふ言いながらそうやって聞く。

「はぁ？」

咄嗟に全力で嫌な顔を作ってしまう。俺があんなところに？頭でも吹っ飛んだのか？

「ごめんごめん。ひい君は裏方やったね。」
「裏方でも行く気ねぇぞ。」

　騒ぎから逃げるようにステージとは反対のスタンド側に移動する。ここは人が少なくて、少し休めそうだ。

「安心して、絶対に行きたくなるから。」
「意味わからんことを。」

疲れで腹が空いていたのか、どんどん食べ進めて、パックだけ残す頃にはライブは終わっていた。

　バカ騒ぎはそのまま、桜がステージに出てきて、次の企画のアナウンスをする。

「次は国学生の叫びです！」