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バイバイ

後の祭り①

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 体育祭は青チームの優勝で終わる。校長先生のありがたい言葉を頂戴して、生徒たちは後夜祭を残すだけ。その準備に当たっているメンバーを除いて、教室に戻った。

「由良くん、生きてる?」
「この姿を見てそう思えるか?」

俺は教室に戻るなりそそくさと制服に着替えて机に突っ伏していた。人混みの中から開放されると一気に疲れが押し寄せてきたのだ。

「随分とお疲れのようで。後夜祭はどうすんの?」
「行くよ。桜がなんかするみたいやから。あっ、これまだ言ったらあかんのやった。これでよろしく。」

俺は慌てて口の前に人差し指を持っていく。

「もちろん。そういうことやったら。」
「助かる。」

外ではライブスペースだったり飲食スペースだったりが組み立てられている。予定通りならあと1時間後、後夜祭が始まる。

 疲れを癒すために机と向き合っていたら、1時間なんて数秒に感じられた。

 仮の会長が放送で外に出るように呼びかける。仲のいいメンバーで集まって行動するやつ、ライブガチ勢のやつとか様々。ペンライトを持っていたり、タオルを準備していたり。グラウンドに降りるとすぐに声をかけられた。

「Q、こっちこっち。」
「お前らもう降りてきてたのか。」

いつものメンバー。仕事のある桜以外の5人がそこに揃っていた。きいはもう何か買ったのか、大きな袋を抱えている。これはベビーカステラっぽいな。

「まさかお前らが付き合うなんてな。」
「その事なんだが…」
「私たち付き合ってたから。だいぶ前から。」
「おい、楓。あっさりしすぎやって。」
『は?』

目の前で仲睦まじい雰囲気を醸し出す2人とは反対に、その場にいた俺を含めた他の4人が固まる。

「ってとこは今の今まで自分たちに隠してたってことか?」
「そゆこと。ごめんな、カレン。」
「いや、別にえーけど。そっか~。」

カレンはその場にしゃがみ込むが、その視線は…まぁ、当人は気づいてないだろうし。

 女子は女子同士でキャッキャやってるから、とりあえず矛先は奏に。

「あの時には付き合ってたのか。」
「俺たちが2人でいるところ見られてたのか?」
「去年な。幼馴染やから距離感バグってるんやと思ってた。」
「悪ぃがそれが通常。今までが異常やっただけ。」

奏は悪そうな笑みを浮かべる。これからはキャッキャウフフしてるところを散々見せられるのか。コーヒーが必需品になりそうだ。
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