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バイバイ

体育祭Ⅱ②

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 グラウンドにはテントと簡易的に建てられた入退場門。トラックを囲むようにして椅子が並べられていて、スタンドは紐で囲われている。フェンスには各クラスの委員が描いた看板が立てかけられ、それが30枚…って多すぎると思うが。

 こんな滅多に見ないグラウンドの風景を見れるのも今日だけ。体育祭だけだ。

「そもそも体育祭ってなんのためにあんのやろ?」
「クラスの団結とかそんな感じちゃう?」
「多分、教師への反逆のほうが団結力上がるぞ。」
「それを言ったらおしまいや。」

駅から学校までの道を歩いていたら、グラウンドは自然と見えてくる。その道をいつものメンバーで歩きながら、そんなことを喋っていた。

 前の集団は陽キャの群れ。クラスで統一している髪型で登校して、騒ぐだけ騒いで帰る集団だ。こういう奴ほどその裏にある運営側の努力を理解出来ない。このグラウンドの用意をするのにどれほどの労力がいるのか。あいつらは自分たちさえ楽しけりゃいいからな。

「またQがつまらんこと考えてる顔してる。」
「俺が考えてるのは一般論だぞ。奏もそう思わないのか?」
「そうって?」
「あいつらはただ騒ぐだけってこと。」
「Qが言おうとしてることは分からんでもないな。俺もあーいう奴らは嫌いだ。」
「やっぱ奏はこっち側か!この感覚が分かるやつがいてよかった!」
「でも、そんな青春ヘイトを跳ね除けるほどキラキラしてる奴が俺の隣におるんだが。」

奏が指さしたのは楓。おそらくクラスで統一してるであろう髪型、制服の下には体育祭Tシャツ着ているであろう。なんかいつもよりもこっとしている。ついでに言えば、その横の桜も、またその横の音羽も、そして1番壁側を歩いているきいも…いや、きいは乗っかれなかったか。そんな根性はないもんな。

 正門前には立て看板があって、そこには『KOKUGAKU FES. PartⅡ』の文字が。この体育祭はPartⅡって扱いなんや。

「そういや、後夜祭の司会って投票制やったよな。桜の名前あったけど、結局誰になったんやろ?」

今日の体育祭後には後夜祭が待っている。生徒会が無理を通して今年始めたことの1つだ。去年の体育祭の後、後夜祭の開催を望む声が多数あったらしい。知らんけど。

「あぁあれ。結局私になったよ。」

桜は手を挙げながら言う。たしか、後夜祭まではシークレットやったよな。まぁ、聞いてるのは俺たちだけやしいいか。

「あ~、練習後すぐに帰ろうと思ってたのに、行くしかないやん。」
「私も体育祭が終わったらダッシュで帰って寝るつもりやったのに。」
「俺はあんな陽キャの巣窟、行く気なかったのに。」
『行くしかないやん!』
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