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バイバイ

祭囃子⑪

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「ほら、餌付けだ。餌付け。」
「その言い方はひどない?まぁ、私の両手が塞がってるからやけど。」

文句を言いながらも俺の差し出したベビーカステラを頬張る。

 あれから俺たちの番になるまで一言も喋れなかったが、ベビーカステラを受け取るとすぐにまたいつものようにできるようになっていた。

「早く食べよ。」
「わざわざそっちに行く必要はねぇんじゃねぇか?」
「こっちの方が文化祭の雰囲気、味わえるし。」

「お前がそんなこと言うなら、明日は槍やな」という言葉は飲み込んで、「はいよ」と言ってできるだけ端っこに陣取る。

 昔からの付き合いからか、同じ皿の食べ物を食べることには抵抗がない。1パックしか買わなかった焼きそばやたこ焼きを食べながら、グラウンドの様子を眺める。大半はうちの学校の生徒だが、4割くらいは一般客。中にももっと人がいるだろうから、2000人くらいの人がこの学校にいることになる。

「文化祭っぽくなってきたね。」
「それ、今俺も思ってた。まさか、俺たちが文化祭を楽しんでるなんてな。」
「入学当初はそんなこと考えてなかったもんね。」

何もないまま卒業するものだと思っていた。ただ3年間ずっと学校に行って、帰っての生活を想像していた。でも、こうして座ってられるのは…

「焼きそば、残りもらうぞ。」
「へっ?」

 俺は半分くらい減った焼きそばのパックを取って、抱える。

 今は考えるのをやめよう。そんなのを考えていたら、まともに楽しめない。今は少なくとも考える時じゃない。頭を空っぽにして楽しむ時だ。

「むぅー。」
「悪かったって。たこ焼きは食っていいから。」
「ほんと?やった!」

 食べ終わってゴミを捨てたあと、校舎横に併設されている生徒会室に行く。先客は1組いた。

「あれ?桜やん。」
「きいに久志。2人とも同じやったんや。」

桜と、その隣にいるのは…

「由良。」
「御浜くん、桜と一緒やったんや。」

2人は、今は生徒会室に誰もいないのか、その前に座って暇そうにしていた。普段あまり繋がりのない2人だ。そうなるよな。

 きいは桜と喋ってるし、別に御浜くんとは普通に喋れるから、俺も暇を潰そう。

「横、いいか?」
「ええで。」

御浜くんの横に座って、扉にもたれる。

「彼女はOKなん?」

桜に聞こえない程度の声でそう訊く。御浜くんは彼女持ち。しかも、幼馴染らしい。

「一応説明したら、すぐOK出してくれたぞ。まぁ、こっち側やしな。」

御浜くんは生徒会室の扉の方を指さす。そうか、生徒会側からしたら少しでも盛り上がってくれる方がいいって訳か。

 キィーっとこの建物の扉が開かれる音がする。カンカンと靴音が近づいてきた。

「すみません待たせてしまって、およ?知ってる顔が3つも!何かの縁かな?」

現れたのは御浜くんの彼女で、生徒会書記である富田冴那だった。
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