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バイバイ

祭囃子⑩

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「待ったか?」
「そこまで。ついさっきまで音羽と喋ってたし。」

きいとはこの当番が終わったら一緒に回る約束をしていた。

 あの勝負の後、近くの階段の踊り場で待っていたきいはいつものように笑顔。いつもはあまり待たせることがないから少し変な感じだが。

「で、どこから行く?」
「とりあえずメシだな。腹減った。」
「人と関わりすぎて。」
「そうそう。」

今の俺の周りでは珍しい、こんなことを共感し合える友達。他は…まぁ、陰キャだけど陽キャに近いとか、そんなんが多いからだ。そして、何よりも大きいのが幼馴染であること。だからこそ、コイツと一緒だと変に気を遣わなくていい。

 屋台村であるグラウンドに着く。ここに出店しているのは8クラス。今年は3年生が総取りしたようだ。焼きそば、たこ焼きなど定番のものはもちろん、アニメ肉みたいな少し笑いに走ったのを売っている所もある。

「やっぱり人多いね。」
「俺たちはこんな戦場に突っ込んでいかないといけないのか。」

お昼時なのもあって、どの屋台にも長い行列ができている。その周りの人の流れもぐちゃぐちゃで、唯一落ち着いていられるところといえば、ラグビー部が使っているタイヤを置いているところくらい。気をつけないとはぐれそうだ。

「とりあえず並ぶか。きい、何がいい?」
「焼きそば、たこ焼き、ベビーカステラ、豚まん!」
「よう食べるな。並ぶぞ。」

きいと一緒にまずはベビーカステラの列へ。ベビーカステラは並びながらでも食べられるし、見た感じ1番回転がいい。列の長さ的にも10分待ちくらいだろう。

 目の前の2人は、うちの学校の先輩だった。手にはうちわを持っている。番号は16で同じ番号だ。

「そういえば、ひい君、何番やった?」
「俺は136番やったで。」

今年の文化祭は生徒会企画と称して、カップルナンバーが行われている。配布されたうちわは表面は全員が同じデザインだが、裏面は少しずつ変わっている。デコレーションされた数字がプリントされていて、それが自分の番号。その番号と同じ番号がプリントされているうちわを持っている人を見つけて生徒会室に行けば、写真を撮ってくれるらしい。

「きいは?」
「こんなことってほんとにあるんやね。」

きいの手元のうちわに書かれていた番号は136。俺と同じだ。

「一緒やで、ひい君。」

うちわで口元を隠しながら、顔を赤く染めて、きいは言う。その仕草に思わず顔を背けてしまった。

「後で行くか?」
「…うん。」

それから顔を合わせられなかった。
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