陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

バイバイ

祭囃子④

　カレンとの真剣勝負。その舞台はルーレットに決まった。

　このルーレットも相当作りこんでいる。中にはおそらくベアリング的なものが入っていて、段ボール製だが、しっかりと回る。

　カレンは同じクラスの子に頼んで俺と勝負させて貰えることになった。その分倍働けとか言われていたけど。

「はよやろーぜ。」
「余裕やな。勝つ自信でもあんの？」
「あるに決まってるやろ。」

カレンは椅子に座って俺を手招く。俺は隣に座って、さっき手に入れた20枚のチップを置いた。

「カラーベットでええやんな？」
「ご自由に。」

カレンは俺から言うように「どうぞ」と目配せしてきた。本当に勝つ気満々だから少しムカつく。

「んじゃ赤で。」

このルーレットは黒と赤の2色。黒は黒星のイメージがあって少しイメージが悪いから赤を選んだ。

　チップを全部赤のところに置いて、カレンが選ぶのを待つ。真っ向勝負にするならもう1つしか選ぶところがないんだが。

「じゃあ俺は黒な。」

さっき貰っていた20枚のチップ全てを黒のところに置く。お互いに勝てば相手のチップを全てかっさらえる。男と男の一騎打ちだ。

「じゃあ始めるよ。」

担当の女子がルーレットを回して、ボールを入れた。外の枠に沿ってボールは転がっていく。中のルーレットはやはりベアリング的なものを入れているようで、滑らかに回っている。

　少しずつ、ボールが枠から離れていき、下に落ちてきた。ポケットの縁に当たって跳ねる。その度に減速していって、そしてポケットに入った。入ったのは22の黒のポケットだ。

「俺の勝ち～！」
「俺はお前には勝てねぇのか？」
「当たり前やろ。」

嬉しそうにニカッと笑うカレン。その手はチップの方に伸びていて、40枚全てを持って行った。

　担当してくれた女子が口を開く。

「新宮に勝負を挑んだ方がアホなんよ。新宮、こう見えてギャンブルは強いから。」
「アホやのに？」
「そう。アホやのに。」
「お前ら急に辛辣やな。」

キィーッと吠えるカレン。その肩を桜がポンと叩いた。

「日頃の行いや。」

　カレンとの勝負ですっからかんになった俺は、D組を出ざるを得なかった。