陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

バイバイ

祭囃子②

「すぅ～っ」

カレンは銃を構えて息を吸う。教室内に緊張が走った。空気が止まったように静寂に包まれ、誰も撃たない。ただ、カレンだけの空間になる。

「あっ！」
「？」
「弾入れんの忘れてた。」
「おい。」

張りつめていた緊張が一気に解れる。笑いながら弾を入れるカレンを若干急かしながら周りの台を見る。とりあえずジャンガを抜けそうな人はいない。そもそも狙ってすらいない。

　でも、この目の前のアホはジャンガを1本抜こうとしている。結局昨日の試し撃ちでジャンガを抜けたのは俺だけ。それも20発ほど撃ってからだ。それだけ撃ってやっと1本。そんなレベルの話なのだ。

　なので1ゲーム6発のカレンが抜けるはずがないのだ。俺は安心して直線上から離れる。

「すぅ～っ」

今度こそちゃんと装填して、カレンは大きく息を吸う。目つきも狩人の目に変わった。

―パン

引鉄を引くと同時に高い音が鳴り、コルクは飛んでいく。次の瞬間には、ジャンガを1本押し込んでいた。

「嘘やん!?」
「的屋の息子舐めんなよ。」

カレンは得意気に笑みを浮かべて、次のコルクを装填する。今で大体半分くらい、真ん中右のジャンガだけ凹んでいる。ありえない話ではない。俺だって昨日の試し撃ちのとき、初めて当たったときはそれくらい動いた。

　でも、俺は知っている。1番難しいのはここからだ。ここからは同じ場所に打ち込まないといけない。ラムネの箱のように的が大きかったら同じのに当てることは簡単だが、ジャンガのみたいなコルク玉と同じくらいの大きさの的に2度も当てれるわけが無い。

「これ、あと2回でいけるよな。」
「そう思うんならやってみな。」

あと2回でいける？それが難しいからこれの得点が高いんだよ。

　カレンは銃を構える。狙いはさっきと同じところ。

―パン

再びカレンの持つ銃から放たれたコルク玉は同じところにまっすぐ飛んでいき、凹んでいる真ん中右のジャンガに当たる。1番奥まで押し込まれたジャンガはくるっと旋回して、そして落ちた。

「嘘ん!?」
「俺の勝ち～！」

カレンは煽るように笑う。このジャンガを抜くやつがもう現れてしまった。その事実に膝から崩れ落ちる。

「久志、来たよ～ってどういう状況？」