陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

バイバイ

私の集大成⑤

―ピッピッピッピッ…ピー
―ザーッザーッザーッ…
「Take your marks…」
―ピッ

―ドッボーン
―スーッスーッスーッスーッ…
―トットーントッ
―ザバァ
―パーン
―トットーン…

浮き上がりは上々。この3年間で培ってきたドルフィンキック4回の浮き上がりも上手くいった。水もしっかり捉えられていて、指から抜ける感覚もない。前にした手でしっかり突き進んでいく感覚があって、今日は調子がいいことが分かった。

　私の泳ぎ方はストレートアームのキャッチアップ。手が前に残る時間が長くて、体が真っ直ぐな状態で、疲れずに泳げる。本当は腕を曲げた方がいいのだが、私の場合、泳ぎが崩れたのでストレートアームで泳ぐ。

　そして、若干のギャロップ。左右のバランスが悪くなるが、呼吸の時間を多くとってそこで体力を回復する。その分、左の腕から脇の辺りで水に乗っかる泳ぎをして、体が沈むのを抑えている。

　まずは50mのターン。隣のレーンとほぼ同時に入ったので8番くらいだろう。後半型の私にしてはいい感じだ。ドルフィンキックを2回打って浮き上がる。ここから50mは誰も見えない。同じくらいのペースで泳げばどうにかなるだろうと泳いで、ターンする。またほぼ同時にターンして、向き合って浮き上がった。

　でも、フォームを見たら分かる。この子は前半型。崩れまくったフォームで後半まで持つわけが無い。この子をペースメーカーにしていたら、私も共倒れだ。その奥に見える8レーン。私が見るべきなのはこの子だ。

　少しだけペースを上げて8レーンの子が見えるように位置取りを変える。その子はフラットな姿勢でエコな泳ぎをしている。完全に後半型だ。私より内側にいるということは私よりもタイムが早いということ。この子について行ったらもしかしたらベストが出るかもしれない。

　さっきまで一緒に泳いでいた9レーンの子を置き去りにして、150mのターンを回る。また見えない区間の始まりだ。ここで守っていちゃあいいレースが出来ない。少ししんどいかなと思うペースで泳ぐ。ペースを変えることはしない。ただ、落とさないだけだ。足には乳酸が貯まらないように体を浮かすだけのキックで、必要最低限の推進力を得る。この3年間で培ってきたもの全てをつぎ込んで、後半に入った。