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バイバイ

私の集大成④

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「っし!行ってこい!」
「うん!」

レース30分前。プールサイドに降りる。直前の男子100mバタフライがどんどん進んでいって、レースが少しずつ近づいてくる。

 私には、こんな大会で優勝できるほどの力はない。10位までに入れたらラッキーで、それ以下になっても別に悔しくもなんともない。でも、今日は違う。バカ兄が来ているから。

 バカ兄は来た時、シャツが透けていた。たぶん走ってきてくれた。それが私を見るためにじゃなくても、少しくらいはいい姿を見せたい。

「行きますか。」

私は頬をパンと叩いて、召集所に入っていく。3年女子400m自由形1組10レーン。私の最後の舞台だ。

「10レーン、由良です。」

まずは入り口の係の人に名前を伝えてから、その横にいる人に水着と使うシリコンキャップ、セームを見せる。この水着で泳ぐのもこれで最後。高校になったら買い直す気なので、この水着は仲のいい後輩に譲ると決めている。

 中に入ると、明らかに空気が変わった。ピリッとしているし、なんせ大会中とは思えないくらい静かだ。隣のレーンは、速そう。1組に滑り込んだ私と違って、ちゃんと1組の人だから当然か。

「レーンに入ってください。」

 バタフライの最終組のレースが終わって、リザルドが表示されている間にレーンに入る。測ってくれる係の人と、泳法を見てくれる先生に一礼。そして、プールに一礼。飛び込み台の羽根の位置を調整して、肩を伸ばす。肩甲骨を引き上げて、落として、開いて、閉じる。腕と足を2回ずつ叩いて、気合いを入れる。機材の調整をしている間に集中力を高めて、レースに備える。

 みんな応援で叫んでいるはずなのにその声が聞こえない。今はただ静かだ。緊張から浅くなった呼吸の音と、五月蝿く鳴り響く鼓動だけが聞こえてくる。

―ピッピッピッピッ…ピー

さぁ、全力で楽しもう。
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