陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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バイバイ

私の集大成③

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 12時過ぎになってお弁当を食べたあと、私は2回目のアップに行く。メインプールの隣にあるダイブプールではこれからの種目に出る人のアップとレースが終わったばかりの人のダウンが混じっていた。

 プールは空いているとは言い難いが、朝よりはまだ泳げるくらいで、心拍数を上げながら泳ぐ。ダッシュして、流しての連続で、少し息が切れ始めたくらいで止めた。

 お母さんは今日の朝、向こうに帰って行った。朝ごはんまでのコンディション管理をしてくれたことには、本当に感謝しかない。だけど、本当は見に来て欲しかった。私の集大成を。この3年間の集大成を見て欲しかった。

 スタンドを見渡しても、お母さんはいない。バカ兄がい…バカ兄!?

「バカ兄!なんでおるん?」
「なんでって…後輩の引退試合を見に来ただけ。お前だけ見に来たって訳じゃねぇし。」
「忙しいんちゃうん?文化祭準備とかあるやろ?」
「それはみんなに任せてきた。引退試合のこと話したら行ってこいって。」

素っ気ないながらもそこに兄としての心がある感じがする。少し嬉しい。

 アナウンスがあって、女子の100m自由形が始まった。真奈と璃音は同じ3組で隣同士だ。私は専門種目の関係でその経験がないから少し羨ましく感じる。けど、

「あれ、泳いでる側からしたら嫌よな。」

バカ兄がそう言葉をもらした。隣同士の場合、ゴールした瞬間に勝敗が分かってしまう。「どっちが勝ったんやろ?」より先に結果が見えてしまうのだ。

 そしてついに、2人の個人種目最後のレースが始まる。

―ピッピッピッピッ…ピー
「Take your marks…」
―ピッ

「エーイ!」
「行っけー行け行け行け行け真奈!」
『行っけー行け行け行け行け真奈!』

昴が音頭を取って応援を始める。

 最初の25mは浮き上がりに強い璃音がリード。が、次第に差が縮まっていき、折り返しのターン前では横並びだ。お互いにそれが見えているからこそ、後半のギアがいつも以上に上がる。2人は、この組で頭1つ抜け出して、先頭争いをしている。

 そしてラスト25m。さらにもう1つギアが上がって、熾烈さが増す。そして、そのままタッチした。

『キミノ マナ 1:03.56
 トツイ リオ 1:03.56』

まさかの同着。2人はコースロープを挟んで抱き合っていた。
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