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キザムノ
夏の終わりに⑥
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「奏!」
楓が叫ぶ。奏の手をしっかりと掴んで、どこにも行かないように止めている。そんな奏は上に着たTシャツを脱ぎ捨てて、楓の手を振りほどいた。
「大丈夫。いつもの距離の5分の1くらいを泳ぐだけだ。それに、これくらいが泳げなくて、10月に泳げるわけがねぇだろ。」
「だ、だけど。」
「心配すんな。絶対帰ってくる。」
奏は楓の頭にポンと手を乗せ、騒ぎの方へ走り出した。
〇〇〇〇〇
怖いと言えば怖い。海でそういう距離を泳いだことがないから。
海で泳いだ経験はもちろんある。それでも、1回で泳ぐのはせいぜい500mくらいで、1kmなんか泳いだこともない。けど、今はそんなこと言っていられない。
「あの、どんな感じですか?」
「とりあえずどうやって引き上げるか考えている感じです。」
海の中の子供はまだバシャバシャと暴れている。もういつ溺れてもおかしくない。
「皆さんに言っておいてください。隣の海水浴場で待っててって。」
そう言って俺は海に飛び込む。
とりあえず、子供に近づいた。バシャバシャしていて、手が当たりそうになったが、上手く避けながら。
「落ち着いて、落ち着いて。」
手を捕まえて体を浮かすと、すぐに落ち着いてくれた。ここからあとは泳ぐだけだな。
「お兄ちゃんと一緒に行こう。」
「うん。」
ギリギリ過ぎると海草に足を絡めてしまう可能性があるので、少し離れたところを泳ぐ。子供は泳ぐのがあまり得意じゃないようで、少し沈んでしまっているが、俺が引き上げながら泳いだら問題ない。
海水浴場の方に入っていくと、すぐに人だかりを見つけた。
「憂太!大丈夫?」
「うん、ごめんなさい。」
陸に上がるとお母さんらしき人が寄ってきて、憂太くんに抱きついた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、できることをしただけなので。」
髪を掻き上げて、いつもみたいに前髪が目にかからないようにする。親子の微笑ましい光景を横目に、俺はビーチを歩いていった。
さすがに重たいので、ボトボトになったハーフパンツをしぽりながら歩く。ポタポタと水が落ちて、それが俺の足跡と重なる。
「奏!」
前からそんな声がして、急に抱きつかれた。慌てて顔を上げると楓がいる。耳元では嗚咽混じりの安心したような呼吸が聞こえてくる。
「心配、したんだ、から。」
「ごめん。心配させて。」
周りに他のみんながいないから、おそらく向こう。楓は荷物は頼んできて感じか。
海で濡れて冷たくなった体で、楓の体を抱きしめる。その鼓動で、その体温で、俺の体は溶かされていった。
楓が叫ぶ。奏の手をしっかりと掴んで、どこにも行かないように止めている。そんな奏は上に着たTシャツを脱ぎ捨てて、楓の手を振りほどいた。
「大丈夫。いつもの距離の5分の1くらいを泳ぐだけだ。それに、これくらいが泳げなくて、10月に泳げるわけがねぇだろ。」
「だ、だけど。」
「心配すんな。絶対帰ってくる。」
奏は楓の頭にポンと手を乗せ、騒ぎの方へ走り出した。
〇〇〇〇〇
怖いと言えば怖い。海でそういう距離を泳いだことがないから。
海で泳いだ経験はもちろんある。それでも、1回で泳ぐのはせいぜい500mくらいで、1kmなんか泳いだこともない。けど、今はそんなこと言っていられない。
「あの、どんな感じですか?」
「とりあえずどうやって引き上げるか考えている感じです。」
海の中の子供はまだバシャバシャと暴れている。もういつ溺れてもおかしくない。
「皆さんに言っておいてください。隣の海水浴場で待っててって。」
そう言って俺は海に飛び込む。
とりあえず、子供に近づいた。バシャバシャしていて、手が当たりそうになったが、上手く避けながら。
「落ち着いて、落ち着いて。」
手を捕まえて体を浮かすと、すぐに落ち着いてくれた。ここからあとは泳ぐだけだな。
「お兄ちゃんと一緒に行こう。」
「うん。」
ギリギリ過ぎると海草に足を絡めてしまう可能性があるので、少し離れたところを泳ぐ。子供は泳ぐのがあまり得意じゃないようで、少し沈んでしまっているが、俺が引き上げながら泳いだら問題ない。
海水浴場の方に入っていくと、すぐに人だかりを見つけた。
「憂太!大丈夫?」
「うん、ごめんなさい。」
陸に上がるとお母さんらしき人が寄ってきて、憂太くんに抱きついた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、できることをしただけなので。」
髪を掻き上げて、いつもみたいに前髪が目にかからないようにする。親子の微笑ましい光景を横目に、俺はビーチを歩いていった。
さすがに重たいので、ボトボトになったハーフパンツをしぽりながら歩く。ポタポタと水が落ちて、それが俺の足跡と重なる。
「奏!」
前からそんな声がして、急に抱きつかれた。慌てて顔を上げると楓がいる。耳元では嗚咽混じりの安心したような呼吸が聞こえてくる。
「心配、したんだ、から。」
「ごめん。心配させて。」
周りに他のみんながいないから、おそらく向こう。楓は荷物は頼んできて感じか。
海で濡れて冷たくなった体で、楓の体を抱きしめる。その鼓動で、その体温で、俺の体は溶かされていった。
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