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キザムノ

誕生日③

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 練習は進んで、今日のメインになる。50m×2のダイブと50m×2のレースペースだ。

 俺は次の大会で100mバタフライに出場するので、この練習をバタフライでする必要がある。

「前哨戦やな。」
「倫也、勝つ気満々なんやろうけど、今日は俺が勝つからな。」

隣に並んだ倫也は軽く身体をほぐしている。次の大会の100mバタフライは、その次に待っている新人戦のリレーメンバーがかかっている。この1年間バタフライばかり練習してきた倫也と、専門外の俺。実力は拮抗していて、若干倫也がリードしているくらい。だからこそ燃えるものがある。

 江住先生もその事が分かっているからか、俺たちを横並びにした。ありがた迷惑だ。

「まぁ、前半は思う存分突っ込んでいいからな。どうせトータルで負けるんやから、前半の勝利だけは譲ってやるよ。」
「言ってくれるじゃねぇか。分かったよ。前後半どっちも勝ってやるよ。」

後ろの方の奴らも並び終わって、練習が再開する。俺たちは1組目で、リレーメンバーを普通にはっている化け物共と一緒に泳がないといけない。唯一の一般人の倫也も対抗心バリバリやから、実際誰も人じゃない。

「始めるぞ~!」
『エーイ!』

江住先生の声に反応する。ゴーグルをして、スタート台に乗る。

―ピッピッピッピッ…ピー
『Take your marks…』
―ピッ

 飛び込みの感触はいい感じ。反応もそこまで悪い感じではなかった。むしろマシな方だ。

 浮き上がりは人間辞めてる組が1歩リード。隣の倫也とはほぼ横並びだ。が、半分を過ぎたあたりで倫也が少し前に出る。俺はこれ以上差をつけられないように、後ろにピッタリとつける。

 そして、そのままゴール。倫也とは0.3秒差だ。

「うっし!」
「やっぱ負けたか~」

一応悔しそうにはしておく。2本目も同じような結果だった。

 そして、50×2のレースペースがやってくる。

「後半、差されんようにしろよ。」
「後半勝てるとは限らんやろ。」

これは連続なので、体力勝負の面もある。俺に有利なメニューだ。

 前半の1本はさっきまでのダイブと変わらない。が、少し休憩したあとの2本目は俺の独壇場と言ってもいい位だった。

 浮き上がりから倫也は横にいなくて、水飛沫だけは見えるが、少しずつそのリードも開いている。そして、半分を過ぎたあたりでさらにもう1つギアを上げる。トドメだ。

 壁にタッチして、後ろを確認する。倫也はあと5mだった。

「っし!」

計ってくれた楓と目を合わせる。少し呆れたような顔をされながらも、俺が笑えばつられたように笑った。
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