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キザムノ

親友⑥

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「やっぱ負けたか~!」
「ガチ勢とちょっと噛み付いてみた系男子の差ってすげぇな。」
「俺もガチ勢ってほどではないけどな。」

全員が頭を使いすぎたということで、今はお菓子を食べながらまったりしている。徐々にお開きの時間も近づいてきているのを感じる。

 昔からそうだった。こうやって長く遊んだ日の終わりは、みんなでお菓子を食べながら喋る。そして、時間になって帰る。

 亮介はいつもお兄ちゃんしているが、俺たちの前でははっちゃけて、それこそこのグループで一番子供って言っても過言では無い。というか、一番子供だ。だけど、その子供っぽさこそが亮介なんだと思う。

 海人はまともそうに見えて寂しがり屋。ずっと誰かといたがっていて、俺たちの周りをうろちょろしている。そんな頃もあった。今となっては別にって感じだが、俺たちの前では昔に戻ったように甘えてくる。

 ハルはいつだって冷静なまんまで、楽しむ時は楽しむし、真面目になる時は真面目になる。オンオフがはっきりしていて、でもどんな時でも心の奥底に冷静な自分がいる。そんな感じだと思う。

 俺は、自分のことがよく分からない。ただ、この時間が心地よくて、この空間が心地よくて、ずっと続けばって思ってる。夢見る少年って感じかな?でも、現実を知っている以上、どこか壁があって…

「また遊べるんかな?」

海人がそう口にする。俺たちは学校もバラバラ。クラブもバラバラ。そして志望大学もバラバラ。

「俺たちだ。どうにか時間作るから。」
「あぁ、もちろん。」

亮介とハルは微笑みながらそう言う。その目には少し寂しさも宿っていて、その分からない『いつか』を悲しんでいるようだ。それでも、

「忙しくなっても、なんやかんやで遊んでるんやろうな。俺たち親友やし。」
「だな。」
「社会人になっても遊んでそう。」
「どーする?この中で誰が一番最初に結婚できるか、勝負しようぜ!」
「おうよ!最初のやつの結婚式は、俺たちが友人代表挨拶やって、雰囲気ぶち壊したる!」
「ハル、それは名案だな。」
「それ、全部俺への当てつけにしか聞こえねぇぞ!」
「「「当たり前だ!!!!!!」」」

あぁ、想像できるな。大人になって、酒を飲みながらコイツらと騒いでるのが。これから先もずっと、ずっと、ずっと親友で、切ろうとしても切れないんだろうな。

「お手柔らかに頼むよ。」
「容赦しねぇからな!」
「幼馴染とか、ラブコメかよ。」

やっぱり、コイツらといるのが一番楽しい。そう思えて、泣きそうになった。
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